2018 Fiscal Year Research-status Report
ほ場の特異性を考慮できる高汎化型作物成長モデルの開発
Project/Area Number |
16K18778
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
辰己 賢一 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40505781)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | イネ生長モデル / 野外圃場 / 生育調査 / 不確実性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,1. 進化型多目的最適化手法によるモデルパラメータの最適解群の導出,2. 作物収量予測にとって重要なターゲットパラメータの精緻化と逐次バイアス補正手法の開発により,高い汎化能力を持つイネ生長モデルの開発を目的としている.平成30年度は,引き続きこれまで行ってきたイネ生長モデルの開発を進めると同時に,東京農工大学FM府中本町圃場において,コシヒカリおよびアキタコマチの生育調査(草丈,SPAD)を約2週間間隔で実施し,時系列の地上部における器官別乾物重測定を実施した.収穫時には収量調査および収量構成要素調査の測定を実施した.同様に気象・光環境のデータ収集と土壌の物理的および化学的特性の測定を実施した.昨年度に実施した生育調査および外部環境データと合わせることで年次反復データの整備を行った.以上で得られた野外圃場での実測データを用い,これまで実装を目指してきたイネ生長モデルへの適用を実施し,モデルの汎用性向上と高精度化を行った. また,モデルの高精度化に必要な個葉の光合成能力の時系列変化に着目し,昨年度に実施した光合成速度と葉内二酸化炭素濃度(A-Ci)の関係から得られた最大カルボキシレーション速度と最大電子伝達速度に着目し,コシヒカリおよびアキタコマチの個葉光合成能力の生育ステージ別の変化および葉窒素濃度との関係に関する査読付き論文を発表した.本成果は作物生育モデルの汎用性の向上に大きく寄与するものである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,高い汎化能力を持つイネ生長モデルの開発を目指しているが,予定していた生育調査をほぼ失敗することなく行うことができた.代表者が海外留学していたため,一部の調査を実施することができなかったが,想定の範囲内である.一方で,得られたデータの一部を用いた査読付き論文の発表を行うことができたため,研究計画はおおむね順調に進捗していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度はこれまでに得られた時系列生育データ,収量データを開発したモデルに適用し,モデルによるイネ生長の再現性を確認する.また,実施できなかった器官別の窒素濃度測定を進める. 得られた成果の国際学会やワークショップ等での発表を行う.さらに,年次反復測定データ結果を使い,作物成長モデルに関する査読付き英文誌への投稿を行う.具体的には,今年度中に5本程度の論文の投稿を目指す.以上により,気象などの外部環境とイネ生長との関係を生理学的に明らかにするとともに,モデルに関する知見を積み上げていき,外部環境の変動から作物生長の動きを定量的に説明でき,そして予測することができるような物理型モデルを世界に成果を発信していくことを予定している.
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Causes of Carryover |
2018年度のほぼ1年間,代表者が海外留学に行っていたため,国内で予定していた一部実験を実施することができなかったため,旅費や一部謝金を執行することができず,やむを得ず次年度への繰越を行った.
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Research Products
(5 results)