2016 Fiscal Year Research-status Report
成熟プリオン蛋白には存在しないアミノ酸変異がプリオン蛋白異常化をおこす機序の解明
Project/Area Number |
16K18790
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小林 篤史 北海道大学, 獣医学研究科, 准教授 (50431507)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | プリオン / GPIアンカー / 疾患モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
遺伝性プリオン病の原因遺伝子変異M232Rはプリオン蛋白glycosylphosphatidylinositol (GPI) アンカリングシグナルペプチド(GPI-SP)中に存在するためプロセッシング後の成熟プリオン蛋白には存在しない。それにもかかわらずM232R変異がプリオン蛋白異常化を起こす機序を解明するため、本研究では以下の3点を追及している:(1) M232R変異を導入したヒトプリオン蛋白遺伝子を発現するノックインマウス(Ki-M232Rマウス)はプリオン病自然発病モデルとなるのか? (2) Ki-M232Rマウスではプリオン感染の際にプリオン蛋白異常化が起こりやすいのか? (3) M232R変異はGPIアンカリング不全を起こしプリオン蛋白異常化を誘導するのか? 初年度はまず、M232R変異によりプリオン蛋白のGPIアンカリング不全が起きるのかを検証するため、Triton X-114によるGPI(+)プリオン蛋白分画とプリオン蛋白GPI-SPに対する特異抗体によるGPI(-)プリオン蛋白解析をおこなった。するとKi-M232Rマウスでも遺伝性プリオン病M232R患者でもGPI-SPの切断およびGPIアンカーの付加は正常におこなわれることが明らかになった。また上記実験と並行して、M232R変異がプリオン蛋白異常化を誘導することを実験的に証明するため、Ki-M232Rマウスと野生型マウスを用いたプリオン感染実験を開始した。現在までに、孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病プリオン M1株を接種した群で全てのKi-M232Rマウスが発病している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
一部の感染実験については初年度から発病する個体も得られ始めてきた。また、GPI-SP抗体の作製も予定より早くに完了し、初年度からGPI-SP抗体によるGPI(-)プリオン蛋白の解析に着手できた。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は、感染実験を続け発病したマウスの解析をおこなうとともに、Ki-M232Rマウスが加齢に伴いプリオン病を自然発病しないか寿命まで飼育して観察する。これによりM232R変異が自然発病を誘導するのか、プリオン感染の際にプリオン蛋白異常化を促進するのかを明らかにする。また、初年度の成果によりM232R変異がGPIアンカー付加には影響しないことが示されたため、次年度はM232R変異がGPIの性状に影響を与えるのかについてflotation assayおよび細胞内局在解析をおこなって明らかにする。
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