2016 Fiscal Year Research-status Report
抗トリパノソーマ作用機序評価系の確立と新規創薬への応用
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16K18793
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
菅沼 啓輔 帯広畜産大学, 畜産学部, 特任助教 (60772184)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | トリパノソーマ / 薬剤開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに研究代表者が確立した代表的な動物トリパノソーマ病であるナガナ病(Trypanosoma congolense, T. brucei)及びスーラ病(T. evansi)に対する薬剤スクリーニング系に加え、媾疫(T. equiperdum)に対する薬剤スクリーニング系を開発した。これにより主要な動物トリパノソーマに対する薬剤スクリーニング系を使用できる体制を整えた。さらに研究代表者らが独自に確立したT. equiperdum IVM-t1, t2株(モンゴル分離株)を用いて、既存の抗トリパノソーマ薬のIC50を算出した結果、スラミンに対する感受性が異なることが明らかとなった。 確立したスクリーニング系を用いてリファレンス化合物並びに様々な天然由来化合物の抗トリパノソーマ活性を解析した結果、海綿由来化合物や薬草由来化合物に抗トリパノソーマ活性を見出し、複数の論文として報告した。 またリファレンス化合物の選定過程で、抗生物質の一種にin vitroで強い抗トリパノソーマ活性が認められたため、ドラックリポジショニングの観点からin vivoにおける抗トリパノソーマ活性の検討を進めた。まずT. congolense感染マウスモデルに対し腹腔内投与及び経口投与で当該抗生物質を短期間投与(1週間の連続投与)した結果、経口投与で薬剤秘湯予言と比較して有意な生存期間の延長及び血中原虫数の減少が認められた。一方、腹腔内投与では経口投与とは異なり生存期間の延長や血中原虫数の減少といった抗トリパノソーマ作用は認められなかった。当該抗生物質は安価であり、すでにヒトの細菌感染症で使用されているため安全性も検証済みである。そのため、当該抗生物質の薬剤としての適用範囲を「トリパノソーマ病治療薬」へと拡大させる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
媾疫に対する薬剤スクリーニング系を確立したことにより、ナガナ病・スーラ病・媾疫と主要な動物トリパノソーマ病の病原トリパノソーマに対する薬剤スクリーニング系を確立できた。以上より、動物トリパノソーマ病の新規薬剤開発に必要な基礎技術を整備でき、今後の薬剤開発の進展が期待出来る。しかし薬剤作用推定系に必要な基盤データである、化合物非投与時のトランスクリプトームデータベースの整備が遅れている。 一方、経口投与で抗トリパノソーマ作用を持つ抗生物質を見出したことは、当該抗生物質の適用範囲を広げることにつながり、さらにインフラの整っていない地方部での治療に寄与することが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
リファレンス化合物群を投与した時の発現遺伝子の変動を明らかにするため、まず化合物非投与群でのトランスクリプトームデータベースを整備する必要がある。現在T. congolenseに関してはドラフトゲノムデータがあるので、そのデータをもとにトランスクリプトーム解析を行う。またT. equiperdumについてはドラフトゲノム解析を実施中であり完成を目指す。 さらにH28年度に見出した経口投与で抗トリパノソーマ作用を持つ抗生物質について、よりヒト感染性のアフリカトリパノソーマに近縁な動物トリパノソーマを用いた感染マウスモデルを用いて治療実験を行い、ヒトアフリカトリパノソーマ病への適応を検討する。
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Research Products
(7 results)
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[Presentation] 媾疫トリパノソーマ(Trypanosoma equiperdum)の分離と新規原虫株樹立2016
Author(s)
菅沼 啓輔, Sandagdorj Narantsatsral, Banzragch Battur, 山﨑 詩乃, Davaajav Otgonsuren, Musinguzi Simon Peter, Batdorj Davaasuren Badgar Battsetseg, 井上 昇
Organizer
第159回日本獣医学会学術集会
Place of Presentation
日本大学(藤沢市、神奈川県)
Year and Date
2016-09-06 – 2016-09-08
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