2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K18794
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
白藤 梨可 帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 助教 (00549909)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マダニ / 栄養シグナル伝達 / 原虫伝播 / RNA干渉法 / 飢餓 / 飽血 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.フタトゲチマダニ雌ダニ(単為生殖系)にバベシアBabesia ovata(三宅株)感染ウシ赤血球を吸血させた。吸血を完了(飽血)し落下した雌ダニをサンプル瓶に回収し、インキュベーター内で飼育し、産卵準備期(飽血後1~4日目)に解剖した。摘出した脂肪体(FB)および卵巣(OV)よりtotal RNAを、その他臓器を含む残骸(CA)よりDNAを抽出した。B. ovata β-チューブリン特異的プライマーを用いたnested PCR により、B. ovata遺伝子が検出されたCAサンプルのマダニについて、そのFBおよびOV由来RNAを用い、Vg合成(Akt、Target of rapamycin (TOR)、S6キナーゼ(S6K)、GATA、ビテロジェニン(Vg))およびVg取り込みに関与する分子(Vg受容体(VgR)、autophagy-related gene 6 (ATG6))について、リアルタイムPCR法による遺伝子発現解析を行った。その結果、脂肪体におけるVg合成関連分子の遺伝子発現は、原虫感染マダニ(iRBC群)および非感染マダニ(RBC群)間で有意差が認められなかった。一方、iRBC群の卵巣特異的Vgの発現は、RBC群に比べ、飽血後1および2日目に有意に上昇し、3日目に低下した。Vg取り込みに必須のVgR およびATG6については、飽血後2日目のiRBC群においてRBC群より発現が有意に低下した。以上のことから、B. ovata感染ウシ赤血球を吸血したマダニでは、飽血後2日目まで卵巣特異的Vgの合成が促進され、体液中からのVg取り込みが抑制されることが推測された。 2.マダニ唾液腺より抽出したDNAを用い、タイレリアTheileria orientalis遺伝子をPCRにより増幅するための条件検討を行い、最適なプライマーを決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、昨年度サンプリングしたバベシア原虫感染飽血マダニの脂肪体(FB)と卵巣(OV)の核酸抽出を行い、Vg合成・取り込みに関与する遺伝子群について、リアルタイムPCR法による発現解析を行った。その結果、原虫感染時に発現レベルが変動するマダニ遺伝子を見出した。これらの知見は、マダニにおける原虫の介卵伝播機構を分子・細胞レベルで理解するための重要な基礎的情報であり、原虫伝播阻止ワクチン開発への応用に繋がると大いに期待される。来年度は、RNA干渉法による遺伝子発現抑制実験を行い、原虫の介卵伝播とマダニの栄養代謝関連遺伝子の相互作用解明を図り、マダニの原虫媒介能を評価する予定である。また、核酸サンプルに加え、卵巣および体液(ヘモリンフ)のタンパク質サンプルを調整済みであり、ウェスタンブロット法による各種解析を進めているところである。 現在、マダニDNAサンプルを用いたタイレリア原虫遺伝子検出には、宿主動物の赤血球に寄生するステージの原虫を標的としたPCRが応用されている。しかし、マダニステージと赤血球寄生ステージの原虫は形態だけでなく性質も異なっており、同一ではない。そこで、マダニステージで発現が上昇することが知られているタイレリア遺伝子を標的としたPCRを試み、本法の有用性を検証した。その結果、マダニステージの原虫を検出するための最適なプライマーを決定し、マダニのタイレリア感染・非感染を判別するための手法を確立した。 これらの成果は、来年度の研究推進に繋がる重要な知見であり、今年度もおおむね順調に進展したと評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今年度得られた研究成果を基に以下の内容について実施する。すべての研究成果を総括する。 1.バベシア原虫感染フタトゲチマダニの飽血以降(産卵準備期間)において、卵巣における原虫検出ならびに脂肪体・卵巣・体液(ヘモリンフ)におけるTOR 経路関連分子(Akt、TOR、S6K、GATA、Vg)のタンパク質レベルでの解析を行う。 2.未吸血状態で飼育し飢餓状態にしたタイレリア原虫保有マダニの唾液腺について、29年度に確立したPCR法により原虫検出を行い、原虫感染が確認されたマダニの唾液腺よりRNAを抽出し、そのサンプルを用いてオートファジー関連遺伝子の発現解析ならびに形態学的解析を実施する。 3.原虫感染・非感染マダニ間で発現に有意差が認められた遺伝子については、RNAiを実施し、マダニの原虫媒介能を評価する。
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[Journal Article] Transovarial persistence of Babesia ovata DNA in a hard tick, Haemaphysalis longicornis, in a semi-artificial mouse skin membrane feeding system2017
Author(s)
Umemiya-Shirafuji R, Hatta T, Okubo K, Sato M, Maeda H, Kume A, Yokoyama N, Igarashi I, Tsuji N, Fujisaki K, Inoue N, Suzuki H.
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Journal Title
Acta Parasitologica
Volume: 62
Pages: 836-841
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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