2017 Fiscal Year Research-status Report
牛サルモネラ症原因菌の新規ADP-リボシル化毒素産生機構の解明
Project/Area Number |
16K18797
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
玉村 雪乃 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究部門, 研究員 (90584384)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | Salmonella / ADP-リボシル化毒素 / ファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
Salmonella Typhimurium(ST)ファージ型104(DT104)は疫学的な観点から高病原性と考えられている。DT104は百日咳毒素に相同性を示す蛋白ArtABを産生し、さらにDT104以外の一部のSTや、他血清型および他菌種においてもartAB保有株が存在するが、ArtABとSalmonellaの病原性との関連については明らかでない。本課題ではArtABの発現機構を解析することで、病原性との関連を明らかにする。 DT104においてはartABはプロファージ(Artプロファージ)上に存在し、マイトマイシンC刺激により発現が誘導される。平成28年度はDT104以外のartAB保有株においてもDT104と同様に、プロファージ上にartABを保有することを明らかにした。平成29年度は、artAB保有株のArtファージの塩基配列を決定した。それらを比較した結果、複数の種類のファージが認められ、Artファージの多様性が明らかとなった。DT104のArtファージはartAB非保有DT104だけでなく、他の遺伝子型のSTへも伝達したことから、ArtファージがSTの強毒化に寄与する可能性が示唆された。他の血清型や、他の菌種への伝達は認められなかった。 DT104感染動物体内におけるArtAB発現状況について検討するために、マウスマクロファージ内におけるartA発現量の測定を行った。その結果、培養液中のDT104と比較してマクロファージ内のDT104ではartA発現量の増加が認められ、動物体内においても毒素が発現していることが示唆された。さらに、マイトマイシンC以外の発現誘導物質について探索した結果、ニューキノロン系抗生物質によりArtAB産生が誘導された。このことから、DT104感染動物への抗生物質投与によりArtAB産生が誘導される可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Artファージの構造、伝達性、ArtABの動物細胞内における発現状況が明らかとなり、おおむね当初の計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
DT104以外の株のArtファージについても伝達性を確認し、血清型や菌種を超えてartABが伝達するか明らかにする。動物細胞内における毒素発現のメカニズムを明らかにする。
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Causes of Carryover |
DNA合成製品を発注する予定であったが、取り消したために次年度使用額が生じた。平成30年度に改めてDNA合成製品を発注する予定である。
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