2016 Fiscal Year Research-status Report
新規ワクモ防除用ワクチンの開発:組換えマレック病ウイルス生ワクチンの応用
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16K18798
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
村田 史郎 北海道大学, 獣医学研究科, 助教 (10579163)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ワクモ / 組換えワクチン / マレック病 / マレック病ウイルス / 感染性クローン / 組換えウイルス / 弱毒生ワクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、世界中の養鶏場で深刻な問題となっているワクモの新規防除用ワクチンの開発を目指す。抗ワクモワクチンについては、いくつかの抗原がこれまでに同定されている。本研究では、マレック病弱毒生ワクチンにワクモ抗原遺伝子を組み込んだワクチンを作製し、マレック病の発症予防に加え、ワクモ防除も同時に可能となるワクチン開発を行う。マレック病ワクチンは、養鶏場においてほぼ全ての鶏に接種されているため、抗ワクモワクチンの実用化を目指す上で、ワクチン接種にかかる負担軽減にも貢献する基礎研究となる。 今年度はワクモ抗原発現プラスミドを作製し、その発現カセットをEn Passant Mutagenesis法によりマレック病ウイルス(MDV)ゲノムに挿入した。本研究では、MDV強毒株であるRB1Bを用いた。MDVの病原性に必須であるmeq遺伝子と、目的遺伝子を置換させることで、ワクモ抗原遺伝子発現カセットの挿入に加え、MDVの病原性も欠失させたMDVゲノムの作製を目的とした。得られたクローンのうち、目的の領域にワクモ抗原遺伝子発現カセットが挿入されているかどうか、RFLP、PCR及び塩基配列解析により確認した。その結果、meq遺伝子欠損、ワクモ抗原遺伝子発現カセット挿入RB1B感染性クローンが複数得られた。 続いて、得られた感染性クローンプラスミドをリン酸カルシウム法により培養細胞に導入し、ウイルスの再生を試みた。しかし細胞変性効果は認められず、ウイルスは再構成されなかった。理由としては、発現カセットを挿入したことにより、ワクモ抗原遺伝子の発現量が多く、細胞またはウイルスの増殖に影響を及ぼしていることが考えられた。そのため、挿入するワクモ抗原遺伝子の機能を損なわせる変異を挿入し、新たな感染性クローンを作製し直す必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究計画では、平成28年度に目的のワクモ抗原遺伝子を挿入したマレック病弱毒生ワクチンを作製する予定であった。計画通りに感染性クローンプラスミドの作製までは完了したが、得られたプラスミドからウイルスを再生させることができず、研究計画の変更が必要となった。ウイルスの再生が認められなかった原因としては、発現した抗原タンパク質が、細胞またはウイルスの増殖に影響を与えている可能性がある。当初はワクモ抗原遺伝子の発現量を高めるため、作製した発現プラスミドの発現カセットをウイルスゲノムに挿入する計画であったが、ワクモ抗原タンパク質の機能を損なわせる点変異を導入した感染性クローンプラスミドを作製するか、あるいは発現カセットではなく、ワクモ抗原遺伝子のみとmeq遺伝子を置換させ、タンパク質発現量を低下させた感染性クローンを作製することで対応する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
ウイルスの再生が認められなかった原因は、発現した抗原タンパク質が持つ機能によるもの、あるいは抗原タンパク質の過剰な発現が細胞またはウイルスの増殖に影響を与えている可能性がある。そのため平成29年度は、まずワクモ抗原遺伝子の機能を損なわせる点変異を導入した感染性クローンプラスミド、さらにワクモ抗原遺伝子のみとmeq遺伝子とを置換させた感染性クローンプラスミドを作製し、ウイルスを再生させる。ウイルスを再生させた後は、ワクモの防除効果とマレック病の予防効果を観察するため感染実験を行う。マレック病の予防効果については、再生させた組換えウイルスで免疫した鶏にMDV強毒株を接種し、生存率や腫瘍形成率を観察することで検討する。ワクモの防除効果は、感染実験に用いた免疫鶏より血液を採取し、人工吸血装置を用いてワクモに吸血させ、その後2週間に渡り生死判定を行い、抗ワクモ効果を検討する。また、本感染実験に供する鶏は、経時的に血液を採取し、ELISAにより抗体価の推移を確認する。
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Causes of Carryover |
今年度作製した組換えウイルスゲノムからウイルスの再構成は確認されなかったため、新たに数種類の組換えウイルスを試作する必要がある。そのため、新たな組換えウイルス作製用の試薬代およびウイルス再構成後の実験に必要な経費として、細胞培養用試薬および実験動物経費の一部を次年度の使用とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の実験計画より作製する組換えウイルスの種類を増やす必要があるため、次年度使用額のうち、約25万円については細胞培養試薬および消耗品に使用し、約15万円については実験動物経費に使用する。
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Research Products
(12 results)