2016 Fiscal Year Research-status Report
3次元培養系でのソノポレーションの機序解明とシスプラチンの抗腫瘍効果増強
Project/Area Number |
16K18799
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐々木 東 北海道大学, 獣医学研究科, 助教 (00754532)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ドラッグデリバリー / 細胞内濃度 / 抗がん剤 / 3次元培養 / 超音波治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
超音波とマイクロバブルによるドラッグデリバリー技術、ソノポレーションは非侵襲的な手法として臨床への応用が期待されている。本研究では生体を模した3次元培養系を用いてソノポレーションのメカニズムを解明し、その臨床応用の加速を目的とする。まず腫瘍細胞と細胞外基質としてコラーゲンを混ぜた3次元培養系を使用し、ソノポレーションが効果を示す厚みを検討した。白金系抗がん剤であるシスプラチンを厚みの異なる3次元腫瘍細胞培養系に対してデリバリーし、その殺細胞効果を評価した。また、殺細胞効果のメカニズムを探るため、誘導結合プラズマ質量分析計(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry, ICP-MS)を用い、細胞内および細胞外白金濃度を測定した。その結果、単回のソノポレーションによって厚さ100 μmまで殺細胞効果、および細胞内白金濃度が増加した。また、30分間隔で3回ソノポレーションした場合、効果の及ぶ厚さは200 μmまで伸長した。続いて、ソノポレーションの持続時間を明らかにするため、超音波照射とシスプラチン添加の間隔を変化させ、殺細胞効果の持続時間を検討した。その結果、ソノポレーションの効果は1時間まで持続していた。生体を模した3次元培養系を用いることで、ソノポレーションによって細胞内の薬剤濃度が上昇して殺細胞効果の高まることが示された。また、1回のソノポレーションで効果が及ぶ距離、また効果の持続時間が明らかとなった。これらは、今後、ソノポレーションの効果を臨床応用に耐えうる程度に高めるために、必須の基礎データとなる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の特色は、ソノポレーションされる薬剤の定量ならびに距離の解析を行う点、それによってソノポレーションのメカニズム解明を行う点である。これまでに、簡便な3次元培養を用いて薬剤の定量と距離の解析を行い、細胞内薬剤濃度上昇が殺細胞効果の増強のメカニズムであることを示した。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の3次元培養系は腫瘍細胞と細胞外基質を混ぜたタイプである。しかし、抗がん剤は全身投与されることが多いため、生体でのメカニズム解明のためには血管内皮細胞を併せ持つ3次元培養系がより有用である。現在の3次元培養系に血管内皮細胞層を載せた3次元培養系を作成している。腫瘍細胞および血管内皮細胞の変化を比較検討する予定である。
|
Causes of Carryover |
研究はおおむね順調に推移しており次年度使用額が生じる予定はなかったが、年度末に一部の実験機器の修理が必要となった。修理を次年度に行うため、残金を繰り越した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験機器の修理に補填する予定である。
|
Research Products
(5 results)