2017 Fiscal Year Research-status Report
犬種特異的な炎症性腸疾患の病態における腸内細菌叢および制御性T細胞の関連性の解明
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16K18801
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
五十嵐 寛高 麻布大学, 獣医学部, 講師 (20758172)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ポリープ / ミニチュア・ダックスフンド / 自然免疫 / 制御性T細胞 / マクロファージ / 肉芽腫 / 短鎖脂肪酸 / 腸内細菌叢 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は炎症性結直腸ポリープ(ICRP)の病変部における制御性T細胞(Treg)の動態についての解析として、ICRP症例犬28頭のポリープ病変部および肉眼的に正常な結腸粘膜、ならびに健常ビーグル犬21頭の結腸粘膜を使用した(一部は過去の研究で用いたサンプルである:Igarashi et al, 2014)。各種サイトカインおよびFoxp3遺伝子の発現を定量PCR法により解析し、また粘膜内でのTregやマクロファージの分布を免疫組織化学により評価した。 その結果、ポリープ病変部ではIFNγ、IL-17、IL-22、IL-10、TGFβ、Foxp3遺伝子発現が有意に上昇していた。さらに各サイトカインおよびFoxp3、ならびに過去の研究にて報告した炎症性サイトカイン(IL-1β、IL-6、IL-8、TNFα)のポリープ病変部における発現上昇率を比較したところ、IL-1β、IL-6、IL-8、IL-17の上昇率はIL-10よりも有意に高く、IFNγやTNFαはIL-10よりも有意に低いものであった。また、ポリープ病変部におけるTreg数は健常な結腸粘膜と比較して有意に増加していたが、マクロファージの数に有意差は認められなかった。また、正の相関がIL-10遺伝子発現量とTreg数(r=0.527、P<0.01)およびFoxp3遺伝子発現量(r=0.749、P<0.001)との間に認められた。 以上より、ICRP病変部ではマクロファージよりもTregが増加しており、病変部におけるIL-10遺伝子の発現亢進と関連していることが明らかとなった。一方で、IL-10遺伝子は自然免疫系の炎症性サイトカインおよびTh17サイトカインよりも発現上昇率が低かった。このことから、炎症に対する反応性変化としてTregは増加するものの、その他の炎症細胞の浸潤・活性化の制御には不十分であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ICRP症例犬における腸内細菌叢の変動と短鎖脂肪酸濃度の変化との関連性に関する解析に加え、今回ICRP病変部における制御性T細胞の動態が明らかとなった。これにより、実験1として当初計画していたICRPの回顧的な病態解析はほぼ完了したと考えている。 腸内細菌叢の変動と制御性T細胞の動態との関連性については実験犬を用いた研究を実験2として実施しており、こちらについては現在データ解析中であるため、概ね順調と考えている。 実験3として計画していた臨床試験については、ミニチュア・ダックスフンドの飼育頭数の減少もあり症例数が減少しつつあるため、進行に遅れが生じている状況である。今後は、他の診療施設と連携することで症例数を蓄積していく予定である。 以上より、全体としては(3)やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はICRP症例犬における制御性T細胞の動態について解明することが出来たため、現在国際学会発表および論文投稿の準備中である。 次年度は進行の遅れている臨床試験を進めていくとともに、まずは実験犬における腸内細菌叢の変動と制御性T細胞の動態との関連性を明らかにすることで犬におけるプレバイオティクスの消化器疾患に対する臨床的意義を検討していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
実験犬を用いた腸内細菌叢と制御性T細胞との関連性についての解析がまだ進行中であるため、解析費用が一部残っている状態である。この解析は次年度も継続するため、そちらに資する予定である。
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Research Products
(9 results)