2016 Fiscal Year Research-status Report
ウマの滑膜由来間葉系幹細胞を用いた骨軟骨再生に関する研究
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16K18806
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
村田 大紀 鹿児島大学, 農水産獣医学域獣医学系, 学術特定研究員 (00772683)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 骨軟骨 / 再生 / 滑膜 / 幹細胞 / ウマ / 大腿骨内側顆 / 三次元 / スキャフォールドフリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本実験は,ウマにおける関節内骨折,離断性骨軟骨症,および軟骨下骨嚢胞といった関節疾患に対する治療法の確立を目的とする。今年度は,ウマの滑膜組織から分離・培養した間葉系幹細胞を,三次元配置して作製した細胞構造体として,同一個体の関節に作出した骨軟骨欠損に埋植し,関節軟骨および軟骨下骨の再生について,経過観察することを目指してきた。以下に,その研究成果の具体的内容を記載する。 ①実験用ウマ(ポニー)から関節鏡視下で滑膜を採取し,得られた幹細胞を用いて,移植に適した三次元構造体の開発に取り組んだ。滑膜から分離した幹細胞を増殖させ,5千万個以上が得られた段階で,1wellあたり2万5千個ずつ,96wellのU底プレート20枚に播種した。48時間後,細胞が球状の集塊をなして形成する細胞凝集塊(スフェロイド)を,円筒状鋳型の中に約1,900個積み重ね,7日後には直径6.3mmで高さ5mmの,移植に耐えうる強度を持った,円柱状の細胞構造体を作製することに成功した。 ②膝関節切開により大腿骨内側顆を露出させ,直径6.5mmで深さ5mmの骨軟骨欠損を作出した後,あらかじめ準備しておいた細胞構造体を欠損内へ自家移植した。現在は,骨組織の再生をCT検査により経過観察しており,今後は関節鏡視下検査により関節表面を観察した後に,最終的には剖検後,組織学的に評価する予定である。 ③その他,今年度は実験用ブタ(ミニブタ)からも脂肪組織を採取し,得られた間葉系幹細胞を増殖させ,2千5百万個以上の細胞が得られた段階で,1wellあたり1万個ずつ,96wellのU底プレート25枚に播種した。その後,細胞が形成するスフェロイドを,バイオ3Dプリンターを用いて2,400個積層し,直径6mmで高さ5mmの,関節鏡視下移植手術に耐え得る強度と弾力性を兼ね備えた,円筒状の細胞構造体を作製することにも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①当初の予定通り, ポニーから関節鏡視下で滑膜組織を採取し,得られた間葉系幹細胞を用いて,移植に適した三次元構造体の開発に取り組むことで,直径6.3mmで高さ5mmの,移植に耐えうる強度を持った,円柱状の細胞構造体を作製することに成功した。その際,使用する培地を改めて検討したことにより,予備実験において想定された以上の強度を持った,細胞構造体を作製することが可能となり,当初の計画以上の成果を得ることが出来た。 ②上述の通り,細胞構造体の作製に成功したため,その後も当初の予定通り,膝関節切開により大腿骨内側顆を露出させ,直径6.5mmで深さ5mmの骨軟骨欠損を作出した後,細胞構造体を欠損内へ自家移植した。手術手技的に難易度の高い,大腿骨内側顆へのアプローチも確立した上で,移植手術を無事に終え,現在は移植後の骨組織の再生を,無処置(非移植)の欠損における修復と共に,CT検査により経過観察している状況である。また,自然発生性のサラブレッド育成馬における,軟骨下骨嚢胞に対しても今後,細胞構造体移植手術を行う計画であるため,状況に応じて移植できるよう準備を整えている。 ③当初の計画に加えて,ミニブタからも脂肪組織を採取し,得られた間葉系幹細胞を増殖させた。その細胞を,U底プレートに播種することで形成されるスフェロイドとして,バイオ3Dプリンターを用いて積層することで,直径6mmで高さ5mmの,関節鏡視下移植に耐え得る強度と弾力性を兼ね備えた,円筒状の細胞構造体を作製することに成功した。この方法を応用することにより,ウマにおいても同様の細胞構造体を作製することは,十分可能であると考えられる。そのため今後は,関節鏡視下での移植手術をより現実的に計画することが可能となり,当初の計画以上の成果を得ることが出来たと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は当初の予定通り,「ポニーの滑膜組織由来間葉系幹細胞を用いた三次元立体細胞構造体の作製」および「膝関節切開による細胞構造体の大腿骨内側顆への移植」の方法を確立し,実際に滞りなく実験を行うことに成功した。これより,来年度も当初の計画通り,継続して骨組織の再生をCT検査により経過観察し,関節鏡視下検査により骨軟骨欠損表面の評価を行った上で,最終的には組織学的に評価し,臨床評価との関連性について検討する予定である。また来年度以降には,自然発生性の軟骨下骨嚢胞に対しても,細胞構造体移植手術を行い,その効果を臨床的に評価することを計画しているため,実際の競走馬の骨嚢胞症例を前もって確保し,すぐにでも移植できるよう準備を整える予定である。 また今年度は,「ブタの脂肪組織由来間葉系幹細胞を用いてバイオ3Dプリンターにより作製する三次元立体細胞構造体の検討」を行うこともでき,ミニブタの脂肪組織から得られた間葉系幹細胞のスフェロイドを,バイオ3Dプリンターを用いて積層することにより,関節鏡視下での移植に耐え得る強度と弾力性を兼ね備えた,円筒状の細胞構造体を作製することにも成功した。そこで来年度は,ブタの膝関節に骨軟骨欠損を作出し,細胞構造体を実際に移植して,経過観察を行う予定である。また,以上の実験結果を応用することで,ウマにおいても同様の細胞構造体を作製することが,十分可能であると考えられる。そのため,今後も引き続き,ウマにおける関節鏡視下移植手術の実現に向けて,細胞構造体を移植する方法や移植に用いる特殊器具の開発ついて,検討を重ねる予定である。
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Research Products
(7 results)