2016 Fiscal Year Research-status Report
網内系肉腫細胞株を同種移植したマウスに発生する高フェリチン血症の病態解析
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16K18807
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
近澤 征史朗 北里大学, 獣医学部, 助教 (80566547)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 高フェリチン血症 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度はマウス由来の網内系肉腫細胞株J774をマウス1頭当たり10の6乗個背部皮下に移植して作出した担癌マウスの至適樹立条件を検討した。その結果、10週齢の雄BALB/cマウスにおいて細胞移植後21~25日に体重減少および約70%の個体に高フェリチン血症が発現することが分かった。個体間でのバラつきは多少認められるが再現性も確認され、本研究に用いる担癌マウスの樹立条件が決定した。 上記担癌マウスの性状解析の過程では高フェリチン血症が発現した個体では共通して肉眼的に肺の点状出血が認められることが新たに発見された。また、それら肺の病理組織学的検索では肺間質の肥厚を伴う肺胞面積の減少が移植後およそ21日で観察され、経時的に悪化するとともに点状出血の増加が認められた。興味深いことに、担癌マウスの肺の病理組織像では肺炎を示唆する所見が認められず、肺組織のミエロペルオキシダーゼ活性の上昇も観察されなかった。さらに肺実質への明らかな腫瘍細胞の転移所見も認められなかったことから、肺間質の肥厚は腫瘍や炎症に起因する変化ではないことが示唆された。一方で肺血管内には腫瘍細胞と考えられる大型の細胞集塊が多数観察される個体が存在したことから、腫瘍細胞の血行性転移の過程で血管の破綻が生じ、点状出血を形成した可能性も考えられた。 高フェリチン血症の発現機序を解明する本研究において重要な生体モデルと新知見を得ることができたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初期計画よりも早い段階で初年度の研究目標が達成され、さらに新たな発見に伴うポジティブな研究計画の変更が行われたため。
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Strategy for Future Research Activity |
高フェリチン血症の発現には肺病変の形成機構が深く関与する可能性があると考え、次年度以降の研究計画の一部を変更して担癌マウスの性状解析を進めていく。担癌マウスにおける肺間質を肥厚させる要因を明らかにすることが直近の課題であり、免疫染色法による腫瘍細胞の同定を行うことで転移腫瘍細胞の関与を検討するつもりである。
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Causes of Carryover |
実験動物の購入費用として計上された平成29年度からの前倒し分20万円のうち、およそ8万円がマウス45頭の購入費に充てられた。実験計画ではマウスに生じる変化を経時的に評価することを目標とし、一回目の実験で生じるデータの不足分をそれ以降の実験で補う予定であったが、最初の試験で十分なデータが得られたため追加実験を行わなかった。従って、前倒し申請分の金額に余剰が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品の購入費用に充てる。
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