2017 Fiscal Year Research-status Report
新規アダプタータンパク質PI3KAPが甲状腺ホルモン産生調節に果たす新しい役割
Project/Area Number |
16K18812
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山中 大介 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (10553266)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | エンドサイトーシス / サイログロブリン / 甲状腺ホルモン / アクチン結合タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
甲状腺ホルモンは、動物の正常な発達・成長・成熟や基礎代謝の維持に必須なホルモンで、甲状腺刺激ホルモン(TSH)とインスリン様成長因子(IGF)が、甲状腺機能の制御、ひいては甲状腺ホルモンの血中濃度の調節に重要な役割を果たしていることが知られてい る。最近申請者らは、TSHとIGFによる甲状腺細胞の相乗的増殖誘導を司る新規クロストーク制御タンパク質としてPI3KAPを同定したが 、PI3KAPをノックアウトしたマウスの解析から、PI3KAPが甲状腺ホルモン産生を調節している可能性が明らかとなった。そこで本研究 では、PI3KAPによる甲状腺ホルモン産生の新しい調節機構を解明することを目的としている。甲状腺ホルモン産生に必須なステップのひとつとして、ホルモン前駆体であるサイログロブリンが甲状腺濾胞細胞に再吸収(エンドサ イトーシス)されるステップを挙げることができる。ノックアウトマウスを用いた解析などにより、PI3KAPがこのステップに関与する ことが示唆されたことから、PI3KAPのエンドサイトーシス経路における役割と、その分子機構の解析を進めている。 まず、PI3KAPを強制発現のエンドサイトーシスへの影響やエンドサイトーシス調節の分子機構解析に用いるため、FLAGタグを付加した甲状腺培養細胞株(FRTL-5細胞)の樹立を試みた。FLAG-PI3KAPを細胞に遺伝子導入した後、薬剤耐性によりクローンを選抜した結果、内在性PI3KAPと同レベルのFLAG-PI3KAPを発現する細胞株が得られた。現在、この細胞株を使って、エンドサイトーシスへの影響を解析している。 また、エンドサイトーシスの分子機構解析のため、樹立したFLAG-PI3KAP発現細胞を用いてPI3KAP結合タンパク質を探索したところ、モータータンパク質や細胞骨格タンパク質などいくつかの候補タンパク質が得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
FLAG-タグを付加したPI3KAPの過剰発現細胞株は取得でき、現在これを用いた解析を進めている。PI3KAPノックアウトマウスの甲状腺から採取した初代培養甲状腺細胞を用いた解析が遅れており、安定した結果を出せるよう種々の条件検討を進めて行く。
|
Strategy for Future Research Activity |
初代培養甲状腺細胞を用いた実験系を確立し、これを用いてPI3KAPを介したエンドサイトーシス制御のメカニズム解析を進める。具体的には、PI3KAPノックアウトマウスの甲状腺細胞ではサイログロブリンのエンドサイトーシスが低下することを確認した後、PI3KAPの種々の欠損変異体を導入してレスキュー実験を行い、エンドサイトーシス制御に重要なドメインを特定する。また、本年度明らかにしたPI3KAP結合タンパク質との関連についても結合部位の同定や、PI3KAPへの分子修飾との関連などの観点から解析を進めて行く。最終的には、重要なドメインを欠損したPI3KAPフラグメントを甲状腺細胞に発現させるとエンドサイトーシスが十分に誘導されないことを示し、トランスジェニックマウスの作成を通じてこの機構が甲状腺ホルモン産生に重要であることを示すことを目指す。
|
Causes of Carryover |
研究代表者が、知の集積と活用の場による研究開発モデル事業の一課題である「アミノ酸の代謝制御性シグナルを利用した高品質食肉の研究開発とそのグローバル展開」に参加することとなり、この事業を並行して推進する必要性が出て来たため、本研究計画にやや遅れが生じている。そのため、研究計画を延長し予算の一部を次年度に使用して研究を遂行することとした。次年度の研究費は主に細胞培養試薬などの消耗品に使用する予定である。
|
Research Products
(2 results)