2016 Fiscal Year Research-status Report
Reconstitution of oocyte production system from pluripotent stem cells
Project/Area Number |
16K18820
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉野 剛史 九州大学, 医学研究院, 助教 (10749328)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | マウスES細胞 / 生殖巣細胞 / Ad4BP / Osr1 / 側板中胚葉 / 中央腹側化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ES細胞を目的細胞に分化させるためには胚発生過程の模倣が重要である。卵巣細胞は初期中胚葉→中央腹側の側板中胚葉(LPM)→生殖巣原基という過程を経て分化する。昨年度は以下を検討した。 ①適した初期中胚葉細胞の誘導: 初期中胚葉のうち生殖巣に分化する領域は前後軸の一部のみである。この細胞の誘導には「Wntシグナルが活性化されている期間」が重要である。我々は生殖巣マーカーGATA4の発現を指標に、Wntシグナルを活性化させる条件を決定できた。② 中胚葉の成熟: 初期中胚葉がサブタイプに分化する際には、レチノイン酸(RA)がFGFシグナルなどを抑制する。この知見をもとに条件検討を行い、RA処理は中胚葉がそのサブタイプに分化しつつある誘導2-4日目に、MEK阻害は誘導2-6日目に行うことが有効であることを見出した。③ 中央側LPMの誘導: 初期中胚葉の側方―中央の位置情報はBMP4の濃度により与えられる。そこで、Osr-GFP(LPMでは中央に発現), Foxf1-tdTomato(LPMマーカー)の発現を指標にBMPの処理濃度を検討した。その結果、初期胚同様2本の筋状にOsr1発現細胞が、その側方側にFoxf1発現細胞が誘導される条件を見出した。④ 中央LPMの腹側化: 中央LPMが生殖巣細胞に分化するためには、適した期間、Hhシグナルに主導された腹側化を受ける必要がある。LPM でのFoxf1の発現はHhシグナルにより維持されることからFoxf1-tdTomatoの発現を指標にHhシグナルの活性条件を決定した。その後、初期生殖巣マーカーであるGATA4の発現を指標に、Hhシグナルの活性化は中胚葉細胞がそのサブタイプに分化する誘導2-4日目が適していることを明らかにした。 以上により生体の生殖巣細胞と同レベルまで分化マーカーを発現する条件を検討することころまで研究を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は①生殖巣細胞への各分化段階を示すレポーターES細胞の樹立②これらES細胞を用いた生殖巣細胞の分化誘導を予定した。 生殖巣細胞の各分化段階を示す細胞として中胚葉細胞への分化を示すT-GFP ES細胞、生殖巣の前駆組織(中央側のLPM及びその後の腹側LPM)への分化を示すOsr1-GFP, Foxf1-tdTomato ES細胞及び生殖巣細胞への分化を示すAd4BP-DsRed ES細胞を樹立した。 次にこれらを用い、マウスES細胞を生殖巣細胞へと分化させる条件を検討した。中胚葉を誘導するためのBMP4及びWnt agonistの処理濃度、時間を決定した。さらに中胚葉の成熟化も重要であることも見出した。初期中胚葉はRAによりFGFシグナルを抑制されて成熟する。これらを利用することで誘導中胚葉を初期発生を模して発生させられることも見出した。さらに、初期胚の中胚葉細胞がBMP4の濃度依存的に側方化するという知見をもとに、生殖巣の前駆細胞を含む中央側の側板中胚葉を誘導する条件も決定した。これらの細胞が胚様体であたかも初期胚のように二本の筋状に現れることから、初期発生良く模していることも見出せた。さらにこの細胞を腹側化して生殖巣の前駆細胞へと分化させるために、初期胚の腹側化を担うShhの処理濃度及び処理時間を検討した。さらに、生殖巣の前駆細胞では周辺の組織からの作用によりBMPやTGFbシグナルが活性化していることが期待されこれらの機構に注目した。その結果、生殖巣マーカー(Ad4BP-Dsred)を発現する細胞を誘導できた。以上により平成28年度は多能性幹細胞から正常発生を模倣して生殖巣細胞の分化マーカーを発現する細胞を誘導する方法を確立しつつあり研究は比較的順調に進んでいると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
(i)生殖巣のマーカー遺伝子の発現を上昇させるための条件の検討 誘導細胞は初期の生殖巣細胞と同程度にマーカー遺伝子であるAd4BP-Dsredを発現する。しかし、生体の生殖巣細胞では、その発現がさらに上昇するのに対して、胚様体では、さらなる上昇は認められない。今後はこの発現上昇を促す条件を検討する。現在の方法では生殖巣細胞は酸素が到達しづらい胚様体の内側の細胞から分化することから、メンブレン上での気液海面培養などの酸素を十分に供給できる培養法を検討する。また、生殖巣細胞は生殖細胞とともに発生することから、生殖細胞との共培養によりAd4BP-Dsredのさらなる発現上昇が期待される。一方、生殖巣形成を担う機構が十分に働いていない可能性も考えられる。そこで、この過程に必要であることが示されている遺伝子の発現を調べ、どのような機構が胚様体では十分に働いていないのかも検討する。この遺伝子に注目しAd4BP-DsRedの発現上昇を促す条件を検討する。 (ii)誘導生殖巣細胞を用いた卵胞構造の再構築 Ad4BP-DsRedの発現を上昇させる条件を決定したのちは、誘導生殖巣細胞を用いて卵胞構造を再構築する。再構築は同じくマウスES細胞からin vitroで誘導された始原生殖様細胞 (PGCLC) との共培養により行う。この際には、日下部らが初期胚の卵巣細胞とPGCLCを用いてin vitroで卵胞構造を再構築させた方法を踏襲する。これまでの条件検討により、様々な発生段階及び種類の生殖巣細胞を誘導することが可能になりつつある。そこでどのような誘導生殖巣細胞を用いることで効率良く卵胞構造を再構築できるのかも検討する。卵胞構造を再構築したのちは、得られた卵子をIVFに供し、この卵子が次世代の個体を形成できるかどうかを調べ機能性を検証する。
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