2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K18823
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤井 毅 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (30730626)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ガ類炭化水素型性フェロモン / エノサイト / CYP4Gファミリー / 油滴 |
Outline of Annual Research Achievements |
ガ類には炭化水素型性フェロモンを分泌する種の他に、脂肪族型性フェロモンを用いる種も存在し、それらの種の代表としてアワノメイガ、アズキノメイガ(共にツトガ科)カイコガ(カイコガ科)、ヨトウガ(ヤガ科)の各成虫を用いて、エノサイト類似器官である気管に癒着した半透明の脂肪塊を探索した。その結果、カイコガを除くすべての種の雌雄成虫から、当該器官を発見した。この種間の保存性から、第 33 回国際化学生態学/第 9 回アジア太平洋化学生態学合同会議におけるセッション「Pheromone communication」で口頭発表し、エノサイトという言葉の定義を再考した。 更に、アメリカシロヒトリより単離したHcCYP4G_77遺伝子の機能解析を開始した。まず、この遺伝子がメスの表皮で特異的に発現していることをRT-PCRとin situハイブリダイゼーションから結論付けた。目的遺伝子をバキュロウイルスゲノムに組み込み、昆虫細胞に感染させ目的タンパク質を発現させた。タンパク質の発現を確認後、予め合成した長鎖脂肪酸と長鎖アルデヒドを培地へ添加し細胞画分の抽出物を質量分析しHcCYP4G_77の触媒能を評価した。この結果、本遺伝子の基質が必須脂肪酸ではなく、必須脂肪酸由来のアルデヒドであり脱カルボニルを経て性フェロモン前駆体を生合成した。この結果を踏まえて、RNAシークエンス結果を再解析しHcCYP4G_77と同じく表皮クチクラで特異的に発現する還元酵素を2コピー発見した。これらの遺伝子をそれぞれHcFAR_163、HcFAR_174とし、機能解析のためにクローニングを行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
感染時間など発現系の諸条件の検討や基質の精製などに時間を要したが、現在は解決した。ガ類の炭化水素型性フェロモンの生合成反応は見かけ上脱炭酸反応と考えらえていたが、本課題の成果により、実際は食草中の必須脂肪酸の還元・脱カルボニル反応の組み合わせである可能性が高まり、当該遺伝子機能を慎重に吟味している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、HcCYP4G_77、に加えてHcFAR_163、HcFAR_174についての機能解析も行なう。 特に、HcCYP4G_77はデータベースに登録されている遺伝子ホモログの機能が不明であるという点で新規性の高い酵素遺伝子であるため、ゲノム編集によりHcCYP4G_77ノックアウト個体を作出し、当該遺伝子が炭化水素性フェロモン生合成に関する責任遺伝子かどうかをin vivo系で評価する。HcFAR_163、HcFAR_174については昆虫細胞発現系での遺伝子機能解析を行なう。 また脂肪族型性フェロモンを分泌するアワノメイガ類、カイコガ、ヨトウガなどで当該遺伝子の保存性を調査し、ガ類が生合成できる性フェロモンのポテンシャルに迫る。
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Causes of Carryover |
研究期間を延長し、目的遺伝子の機能をより確実なものとするために試薬・消耗品・ヌクレオチド合成代を合わせて450000円を計上した。
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