2018 Fiscal Year Research-status Report
沿海部の棚田景観が植物種多様性保全に果たす役割:沿海生植物に注目して
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16K18832
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
伊藤 浩二 金沢大学, 先端科学・社会共創推進機構, 特任准教授 (30530141)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 棚田 / 沿海生植物 / 植物種多様性 / 能登半島 / 畦畔草地 / 指標種 / 草地 / 種多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
能登半島をフィールドに、海岸、および海岸から比較的近接した沿海部に特徴的に出現する「沿海生植物種」と、その生育地の実態評価、保全手法の検討を行うため、以下の調査を実施し成果を得た。
①能登半島外浦海岸沿海部で、かつて製塩用の薪採取により里山管理が行き届いていた時代に、海岸に面した草地で広く分布していたというサドクルマユリ(クルマユリの変種、石川県指定絶滅危惧Ⅰ類)の生育分布調査ならびに植生管理実験を行った。その結果、植生遷移による個体数減少傾向が顕著になりつつあることが判明し、植生管理によるハビタット回復の必要性が示された。植生管理実験からは、少人数での効率的な植生管理法に関する知見を得た。 ②沿海地の特に人為的改変を受けた斜面地において優占種となり、他の植物種の定着を遅らせることでしばしば問題となるクズ(Pueraria montana var. lobata)について、適切な管理による自然植生への誘導手法を検討するため、大学内に野外実験区を設置し、刈り取りに対する植物種多様性の反応を調査した。その結果、植生の刈取り頻度と植物種多様性の間に正の相関が認められ、クズの抑制が種多様性回復に効果を持つことが明らかになった。
これらの成果は、草原的環境をハビタットとする沿海生植物種の保全指針を立てる上で重要な知見である。今後は沿海地および内陸地の棚田畦畔地での指標種の抽出を目的に、植生調査を広域で実施する。また野外実験を通じて、クズ除去後の種多様性の回復とクズ再繁茂を抑制するための植生復元手法についても開発を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本課題に関係する応用的研究課題について先に協力者を得ることができたのと、対象の希少種の保全において絶滅の危急性が高かったため優先的に調査を進めた。そのため、当初計画については進行が遅れているが、順序を入れ替えて実施することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
調査地設定の妥当性を踏まえて、現地植生調査を実施する。計画の遅れをカバーするために、調査区数の設定を工夫し、必要なデータをより効率的に得るための手法を取り入れる。
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Causes of Carryover |
植生調査および現地環境のモニタリングの進捗が遅れているため、次年度使用額が生じている。今後植生調査等に必要な謝金および物件費、旅費として使用するほか、ならびに成果報告に必要なソフトウェア、学会発表費、旅費、論文投稿料として使用する計画である。
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Research Products
(1 results)