2019 Fiscal Year Annual Research Report
The role of terraced rice paddy landscape in coastal areas for plant diversity conservation: focusing on coastal plant species
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16K18832
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
伊藤 浩二 金沢大学, 先端科学・社会共創推進機構, 特任准教授 (30530141)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 棚田 / 畦畔草地 / 植物種多様性 / 沿海生植物 / 植生管理 / 希少種 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は以下の調査を実施し成果を得た。 ①能登半島に分布する沿海地および内陸地棚田のフロラ調査を通して、立地ごとに特徴的に出現する植物種の特定を試みた。特に沿海地棚田である白米千枚田では、ハマツメクサ、ヒオウギ、ツボクサ、ハマボッス、キリンソウ、エゾカワラナデシコ、オニヤブソテツといった沿海生植物種が特徴的に出現し、同じ地区内の棚田景観内でも海岸線からほど近い(10m内外)範囲に集中することが判明した。 ②能登半島外浦海岸沿海部でかつて海岸に面した草地で広く分布していたというサドクルマユリ(石川県指定絶滅危惧Ⅰ類)の生育分布、環境調査ならびに植生管理実験を行った。その結果、植生遷移による個体数減少傾向が顕著になりつつある一方で、植生管理によって個体群回復の可能性があることが分かった。また本種と同所的に生育する植物種を抽出し、植物社会学的視点から新規個体群の発見につながる手がかりを得た。 ③沿海地の特に人為的改変を受けた斜面地において優占種となり、他の植物種の定着を遅らせることでしばしば問題となるクズについて、刈取り管理による景観に配慮した二次草地への誘導手法を検討するため、大学内に野外実験区を設置し管理に対する植物種多様性の反応を調査した。その結果、6月および9月の年二回の刈払いでは秋季の優占種のクズ、セイタイカアワダチソウの抑制に十分な効果が表れなかったものの、春季の群落構造が変化し、フキが優占する群落に誘導可能なことが明らかになった。
研究期間全体を通じて、能登半島をフィールドに海岸および海岸から比較的近接した沿海部に特徴的に出現する沿海生植物種の存在を確認し、沿海地棚田がその生育地として一定の機能を果たしていることが判明した。またクズ等による偏向遷移により生物多様性や景観上の問題が生じうる斜面草地での植生管理手法の検討により、希少種保全に必要な実践的知見を得ることができた。
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