2016 Fiscal Year Research-status Report
アミド挿入反応の新展開とカルベノイドの金属特性の解明
Project/Area Number |
16K18840
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
原田 慎吾 千葉大学, 大学院薬学研究院, 助教 (50722691)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 挿入反応 / ロジウム / カルベノイド / ナイトレノイド / アミド / C-H結合 / 銅 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属カルベノイドの挿入反応は、結合開裂を伴いながら炭素原子が結合間に割り込む特徴的な分子変換法である。近年でもC-H結合や炭素-炭素多重結合への挿入反応は、不活性結合の官能基化法として研究が行われている。以前、申請者は世界で初めて金属カルベノイドのアミド結合に対する挿入反応の開発に成功した。今回、申請者はアミド挿入反応を生物活性物質の合成に応用することで、本反応の有用性を実証すると共に創薬化学展開ができると考えた。しかし本反応は高価なロジウム触媒を要する点に、改善の余地を残す。そこで安価な金属触媒への代替研究およびカルベノイド化学における金属特性の解明を目的として研究に着手した。 安価な金属触媒を用いるアミド挿入反応の開発に向けて、銅触媒を網羅的に検討し、Cu(tfacac)2触媒が有効であることを明らかにした。さらに触媒量の低減を検討した所、0.05 mol %の触媒量でも反応を完結させることができた。これは報告されている銅カルベノイドの挿入反応の中で最も少ない触媒量である。本反応により窒素渡環システムを一挙に構築することができたので、アミド挿入反応を鍵工程とする天然アルカロイドの全合成を検討した。五環式構造を有するモノテルペノイドインドールアルカロイド、ベロシミンの既知中間体へと誘導することに成功し、その形式全合成を達成した。 また金属カルベノイドと金属ナイトレノイドは類似した反応性を持つことが知られている。しかしながら、それらの類似性・相違性の発現理由を明らかにした報告はなかった。申請者はアミド基に対する反応をモデルとして検討した結果、カルベノイドはアミド挿入反応を起こすのに対し、ナイトレノイドはC-H結合挿入反応を起こすことがわかった。反応機構の解析に向けてDFT計算を行った所、金属種に配位している原子の求電子性が選択性の発現に大きく寄与していることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、計画した通りアミド挿入反応における金属触媒の代替えに成功した。またアミド挿入反応を鍵工程とする天然アルカロイドの形式全合成を達成した。さらに金属カルベノイドと金属ナイトレノイドの反応性を比較して、化学選択性の発現理由を突き止めた。従って、本研究はおおむね順調に進展していると言うことができる。
|
Strategy for Future Research Activity |
1) カルベノイドは配位している金属種によって反応性が異なる事が知られているが、その原因の体系的理解は不十分である。申請者も既に、使用する金属触媒に応じて、異なる骨格を有する化合物が生成する新たな反応系を見出しているが、現在のカルベノイド化学では、その原因を説明できない。申請者は金属触媒の網羅的な検討とDFT計算を行い、カルベノイドの金属特性の解明と有機合成化学への応用を検討する。 2) アミド挿入反応の特徴は、様々な窒素渡環システムの構築が可能な点である。その特徴を活かし、異なる環構造を有する医薬候補分子の合成研究を行う。 3) 本研究の展開として、金属ナイトレノイドを用いた直截的C-H結合官能基化反応の開発に取り組む。
|