2016 Fiscal Year Research-status Report
新規ヘリセン型ホスフィンの開発と不斉触媒反応への応用
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16K18846
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
臼井 一晃 九州大学, 薬学研究院, 助教 (80553304)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 有機化学 / 不斉触媒反応 / ヘリセン / 螺旋 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、我々が独自に開発した内部置換型ヘリセン類の構築技術を利用し、新たに設計・合成したヘリセン型ホスフィン配位子を不斉触媒反応へと展開することで、ヘリセンの潜在的有用性を明らかにするものである。計画している具体的な研究項目は①螺旋構造内部ホスフィノ基を有するヘリセン型ホスフィン配位子の創製とその光学分割法の確立、②不斉触媒反応の探索とその不斉誘起機構解明の2点である。
既に合成に成功している2種のホスフィン配位子(ジヒドロ[5]ヘリセン型ホスフィン配位子:L1, [5]ヘリセン型ホスフィン配位子:L2)がPd触媒不斉鈴木-宮浦カップリング反応に対して高い活性を示し、特にL2を用いた場合、軸不斉ビアリール体を高収率・高エナンチオ選択的に与えることを見出している。本年度は、これら配位子の適用範囲の拡大を目的としてPd触媒による各種不斉アリル位置換(AAS)反応を検討した。1,3-ジフェニル酢酸アリルとマロン酸ジメチルとのAAS反応にL1及びL2を用いたところ共に定量的に所望の生成物が得られ、特にL1を用いた場合には、高エナンチオ選択的に反応が進行することを見出した。本手法は、インドール類やアルコールなどの求核剤に対しても適用可能であった。特にインドール類を求核剤とした場合には、過去に報告されている反応例に比べて、収率、立体選択性共に著しく優れていることを明らかとした。更に、これら不斉配位子の高い立体識別機構をDFT計算により解析し、その機能性を提唱した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H28年度は、項目①を中心として研究を行うことを計画していた。即ち、新規π拡張型ホスフィン配位子の合成と、光学活性なヘリセン型ホスフィン配位子を得る新たな手法を開発することである。 様々な酵素を用いてヘリセンの速度論的光学分割法を実施したが、予備検討の段階で見出した条件よりも良好な条件を見出すことができなかった。本条件を検討するのに予想以上に時間を費やしたため、π拡張型ホスフィン配位子の合成はH29年度に実施する事とした。 一方、同時進行で実施していた項目②に関して、ヘリセン型ホスフィン配位子がPd触媒不斉アリル位置換反応に極めて優れた配位子として機能することを見出すことに成功した。
以上、H28年度に計画以上に項目②の研究を進めることはできたが、項目①に関しては計画通りに進めることはできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況に示したように、実施項目②においてヘリセン型ホスフィン配位子がPd触媒不斉アリル位置換反応に極めて優れた配位子として機能することを見出すことに成功している。また、ヘリセン螺旋空間内でのリン-Pd-アレーン相互作用が、触媒活性と立体選択性に関与していることがX線結晶構造解析や計算化学により明らかになりつつある。 このことから、次年度は、リン-金属-アレーン相互作用を活用した触媒システムの開発(不斉触媒反応の探索)と、更なる高エナンチオ選択性の発現を目指し、螺旋反応場を拡張したπ拡張型ホスフィン配位子の合成を実施する。
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Causes of Carryover |
H28年度に、合成化合物のスペクトル解析を行う予定であったが、対象化合物の合成が遅延したため、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
合成化合物のスペクトル解析を次年度に行うこととし、未使用額(6,789円)はその経費に充てることとしたい。
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Research Products
(21 results)