2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K18849
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
阿部 匠 北海道医療大学, 薬学部, 助教 (80453273)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | エージング / 金属錯体 / タンデム反応 / ワンポット反応 / カスケード反応 / 複素環 / アルカロイド |
Outline of Annual Research Achievements |
金属錯体は高価であるにも関わらず、空気中で ”エージング(aging) = 熟成” した金属錯体は目的の反応を選択的に媒介できないため、金属錯体を目的通り使い切ることは難しい。したがって、古くなった金属錯体を積極的に活用できる方法論の確立は、グリーンケミストリーの観点から検討する価値が高いと言える。さらに、新品金属錯体を使用した競合研究と比較し未開拓な研究分野であるため、新規反応性の宝庫であり、新規触媒反応開発研究分野に対し非常に有益な情報を与えると考えられる。しかし、エージング金属錯体を活用した研究例は皆無である。そこで本研究課題では、失活金属錯体の有効利用と”エージング(aging) = 熟成” 錯体特有の新規反応性の開拓を目指す。 本年度は、幾つかのエージング触媒を用いた複素環構築法を検討し以下に示すような大きな成果が得られた。 1) エージング銅触媒により、ニトリルとアントラニル酸とオキシ塩化リンを用いたリッター型カスケード反応がワンポットで一挙に進行することを見出した。本手法は、イミノケテンをニトリルで補足した初めての例として位置付けることができる。 2) エージング銅錯体を用いたアクリロニトリルとアントラニル酸の8員環構築法の開発に成功した。8員環に複素環を有する化合物の構築は通常では容易ではなく、多段階を必要とする。本カスケード反応では、8員環に複素環を有する化合物をワンポットで構築できる。さらに本反応は、キナゾリノンが縮環したジアゾシンの合成に世界で初めて成功した例である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度、エージング金属錯体のタンデム反応を利用した複素環構築法の開発に成功した。 本手を用いれば、既存法では構築が難しい骨格をワンポットで入手可能であり、アルカロイドや機能性物質の合成手法として期待が持たれる。
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Strategy for Future Research Activity |
エージング金属錯体を用いた骨格構築法の開発と反応性開拓研究を継続して行う。 また、前年度までに開発したエージング金属錯体のタンデム反応を用いてアルカロイドや機能性物質の合成も並行して検討していく。
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Causes of Carryover |
研究が順調に進行したため、当初予定していた試薬、溶媒などを購入する必要がなくなったため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、研究の遂行上、高価な試薬と金属錯体を幾つか使用する予定であるので、これらの購入に充てる予定である。
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