2016 Fiscal Year Research-status Report
がん治療薬を指向した新規カチオン性金属錯体の設計・合成と標的分子の同定
Project/Area Number |
16K18851
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
久松 洋介 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 助教 (80587270)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | イリジウム / ジアジリン / フォトアフィニティーラベリング / カルモジュリン / 細胞死 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は最近、カチオン性ペプチドを有するイリジウム(Ir)錯体が、ヒト白血病T細胞株である Jurkat 細胞表面に結合することで細胞死を誘導することを見出した(Bioconjugate Chemistry, 26, 857-879 (2015))。本研究では、光反応性基としてジアジリンを導入したカチオン性両親媒性 Ir 錯体を設計・合成し、Ir 錯体が結合するがん細胞表面のターゲット分子の同定に取り組んだ。 本年度は、まず、光反応性基であるトリフルオロメチルフェニルジアジリンをKKKGG (K:リシン、G:グリシン)ペプチドの N 末端側に導入した Ir 錯体(生理条件下での総電荷: +9)を設計・合成し、フォトアフィニティーラベリングを行った。Ir 錯体は緑色に発光するため、ラベル化後電気泳動を行えば、ゲル上で Ir 錯体が結合したタンパク質のバンドを発光検出できると期待した。まず、Jurkat 細胞に対して4℃ 下で Ir 錯体を添加し光照射を行った後、細胞を溶解し膜成分と細胞質成分に分画した。得られたサンプルの電気泳動(SDS-PAGE)を行った結果、膜成分の分画において、比較的低分子量(15-20 kDa)の領域で緑色に発光するバンドが観察できた。そのバンドに関して、プロテオーム解析を行った結果、カルシウム結合性タンパク質であるカルモジュリンがターゲット分子の一つであることが示唆された。さらに、カチオン性 Ir 錯体が、カルモジュリンと錯体形成することを滴定実験およびフォトアフィニティーラベリングにより確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標であったジアジリンを導入したカチオン性 Ir 錯体の合成とフォトアフィニティーラベリングを達成できた。さらに、Ir 錯体のターゲット分子の一つとしてカルモジュリンを同定することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
Ir-(カルシウム・カルモジュリン)複合体の結晶化を行うことにより、結合部位などの錯体形成に対する知見を得るとともにIr 錯体の構造最適化を検討したい。さらに、Ir-(カルシウム・カルモジュリン)複合体形成と細胞死誘導シグナル活性化メカニズムとの関連性について明らかにしていく予定である。
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Causes of Carryover |
研究室にストックされている試薬、ガラス器具や機器を活用することで、当初予定していた試薬や消耗品の購入が抑えられたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は、生化学実験に必要な試薬や消耗品の購入に使用する。また、論文投稿や学会発表にも使用する。
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Research Products
(8 results)