2016 Fiscal Year Research-status Report
高反応性炭素ーヨウ素結合を利用した多環式芳香族化合物の新規変換反応の開発
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16K18854
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
武永 尚子 名城大学, 薬学部, 助教 (60734845)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ヨウ素 / 芳香環 / 複素環 / 多環式 / 核酸塩基 |
Outline of Annual Research Achievements |
芳香族化合物は、創薬科学や有機材料科学分野において最も重要な構成単位のひとつであるが、多環式芳香族化合物は、出発原料として供給されている芳香族化合物の種類が少なく、また芳香環への官能基導入反応も十分に確立されているとは言い難い。したがって、多環式芳香族化合物の新たな反応開発が望まれており、本研究では、多環式芳香化合物の新しい活性化法の開拓を目標とした種々の検討を行った。 核酸医薬品の開発が注目されている近年、さまざまな核酸塩基誘導体の合成研究は薬学やバイオケミストリーをはじめとする創薬化学の分野において、重要な位置を占めるといえる。そこで、今年度は主に、プリン塩基誘導体をはじめとした核酸塩基に対し、電子豊富なアリール基やアミノ基などの多様な求核種の導入反応の検討を試みた。その結果、基質が求電子種に活性化され、かつ求核種自身は活性を失わない適度な酸性条件下において、望みの求核種導入反応がハロゲン原子特異的に進行することを新たに見出した。ここで溶媒や添加剤を精査することにより、一般性の高い反応条件を確立することができた。さらに、通常の溶媒とは異なる興味深い反応性を示す有機溶媒としてフルオロアルコールを用いることで、メタルフリーでの効率的求核種導入反応を達成することができた。以上の検討で得られた知見をもとに、生体関連分子等の有用物質の前駆体合成を志向した創薬に役立つ分子シーズ創生研究へとつなげたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に掲げた当初の研究目標について、おおむね問題なく達成できている。研究経費についても有効に活用できており、次年度以降に用いる生体関連分子の購入に充てる経費を十分に残せてある。 研究成果の公表に関して、現在論文執筆中であり、近々国際学術誌への投稿と学会発表を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の基盤研究を深化させつつ、生体関連分子等の有用な多環式化合物群の前駆体合成を適宜推し進めたい。なかでも、核酸塩基誘導体の環境調和型反応を確立し、近年注目されている核酸医薬分野を意識した研究展開を行いたい。
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Causes of Carryover |
初年度であった2016年度は、限られた基質で小スケールでの検討が主となり、また当初の予定よりも順調に研究が進展したこともあり、試薬購入にかかる支出が少なかった。加えて、特許出願等の検討が新たに生じ、研究成果の公表(オープンアクセスを予定)を控えているため、成果発表に関わる経費を抑えたことが、次年度使用額が生じた理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の通り、2017年度は初年度の研究成果を受けて、より大スケールでの反応を行う必要があることや、多様な反応の探索を行うために、試薬およびガラス器具等実験用消耗品への前年度以上の研究費の使用が見込まれる。また、研究発表についても期間内にはすべて終わらせる予定である。したがって、研究期間全体を通じての研究費の使用計画に大きな変更はない予定である。
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