2016 Fiscal Year Research-status Report
ペプチドの立体的相互作用を解析するための生化学ツールとなるフッ素化ペプチドの合成
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16K18855
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
樽井 敦 摂南大学, 薬学部, 講師 (40434873)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ペプチド合成 / 含フッ素化合物 / β-アミノ酸 / 人工ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
非天然型のアミノ酸は人工ペプチドの精密設計への展開が期待されるアミノ酸であり、意図した二次構造制御による活性増強や副作用の軽減が課題として挙げられる。この課題を解決するためにα,α-ジ置換アミノ酸や架橋ペプチドを利用した研究が盛んに取り組まれているものの、未だ課題解決が可能な新規人工ペプチドの開発が望まれている。本研究では水素結合が可能な非天然型アミノ酸として含フッ素アミノ酸に着目し、新規フッ素化ペプチドの合成法の確立と人工ペプチドの物性評価に取り組んだ。 平成28年度は、含フッ素アミノ酸ユニットの導入源としてフルオロ-β-ラクタムを用いた縮合剤を必要としないペプチド合成反応を検討した。フルオロ-β-ラクタムにN-アリール-3,3-ジフルオロ-β-ラクタムを用い、塩基存在下、アミノ酸の塩酸塩と反応させたところ開環反応が進行し、収率良くフッ素化ジペプチドが得られることを見出した。得られたジペプチドはC末・N末ともにペプチド伸長が可能であった。 さらに、ペプチドの物性・生物活性を評価するのに不可欠なキラルフッ素化ペプチドを合成するため、N上にp-methoxybenzyl基(PMB基)を有するキラルジフルオロ-β-ラクタムを合成しアミノ酸による開環反応を検討した。しかしながら、上記で見出したメタノール中ではフッ素化ペプチドは得られなかったため、キラルN-PMB-ジフルオロ-β-ラクタムによる開環反応を種々検討した。長時間の反応を要するものの、トリフルオロエタノール中で反応を行うことでラセミ化を伴うことなく開環反応は進行し、キラルフッ素化ジペプチドの合成を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、アミノ酸による開環反応で縮合剤を用いることなくフッ素化ペプチド構造を構築することができた。高い求電子性を有するフルオロ-β-ラクタムを求電子剤に用いることで開環反応が進行したものと考えられる。また、溶媒をメタノールからトリフルオロエタノールにすることで、反応時間の短縮と反応性に乏しいN-PMB-ジフルオロ-β-ラクタムでの開環に成功し、物性評価に必要なキラルフッ素化ペプチドの合成法を見出した。 一方で、ジフルオロ-β-アミノ酸ユニットを有するオリゴペプチドは種々得られたものの、モノフルオロ置換体は不斉合成を含め検討中である。また、キラルフッ素化ペプチドの合成に時間を要したため、当初計画にあった物性評価にまで展開しきれていない。 以上から、当初計画のフッ素化ペプチドの合成法の開発という観点からは十分な成果が得られたものといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
申請時に計画したように、合成に成功したキラルジフルオロペプチドについて、その物性評価を検討していく。CDスペクトル測定による天然型のペプチドとの比較で、人工ペプチドの二次構造に対する知見を得る。分子力場計算で二次構造を取るオリゴペプチドを見積もり、二次構造を構築するのに最低限必要なアミノ酸残基を比較対象に、人工ペプチドではどう変化するのかを検討する。さらに人工ペプチドのフッ素化アミノ酸ユニットの導入周期や導入部位に変化を持ったペプチドのバリエーションを増やすことで物性評価を深める。
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Causes of Carryover |
平成28年度は研究の進捗の関係上、目的フッ素化ペプチドの合成に集中することとなった結果、物性評価および生物活性評価への展開が思うようにできなかった。物性・生物評価に必要とされるペプチド試薬や活性評価キット等の高額消耗品の購入に至らなかったため、実質支出額が小さくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は物性評価へと研究を展開する予定であるため、比較的長鎖オリゴペプチドの合成試薬費として使用する。また、加水分解を始めとする生物活性評価も検討予定であることから、これを評価するための酵素の購入や活性評価キットの購入費に充てる予定である。
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