2016 Fiscal Year Research-status Report
脂質ナノ粒子を用いたアミロイドβ自己会合の制御による凝集機構の解明
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16K18860
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
池田 恵介 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 准教授 (00553281)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アミロイド / ナノディスク / 自己会合 / 凝集 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らは、これまでにアルツハイマー病アミロイドβタンパク質が脂質膜に結合し、凝集・毒性体形成を起こす過程を明らかにしてきた。しかし、凝集過程のターニングポイントとなる初期会合体の、詳細な構造と凝集における機能は明らかでない。そこで、申請者の開発している脂質ナノ粒子上にアミロイドβを隔離することで、凝集初期の自己会合状態を制御し、会合体を解析できると仮説を立てた。ナノ粒子上のアミロイドβの会合数、二次構造、線維形成能を計測し、この仮説を検証し、初期会合体の機能構造を明らかにする。2016年度は、アミロイドβと強く相互作用する脂質ナノ粒子を作成した。バッファーに懸濁した脂質ベシクル(リポソーム)に、両親媒性ペプチドを加えることで、自発的にディスク形状の脂質二重膜を持つナノ粒子が形成されることを確認した。この際、混合する脂質-ペプチド比を任意に調節することにより、連続的に粒径の異なるナノ粒子が形成される。さらに混合後、チオールであるメルカプトフェニル酢酸(MPAA)共存下でインキュベートすることで、粒子中のペプチドが分子間でネイティブケミカルライゲーション反応を起こして重合し、安定なナノ粒子が形成される。MPAA は透析によって除いた。本法によって、脂質二重膜のディスク径を15-30 nm の範囲で制御した粒子を形成できることを、アミロイドβとの結合が報告されている酸性リン脂質で確立した。このナノ粒子存在下でアミロイドβの線維形成を評価したところ、粒子サイズ依存的に線維形成速度が変化することを見出している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アミロイドβとの相互作用が報告されている酸性リン脂質を用いて、脂質ナノ粒子が形成できることを確認した。また、この粒子と両親媒性ペプチドのモル比を調節することで粒子サイズを制御できることを明らかにした。また、アミロイドβと脂質ナノ粒子の相互作用が、ナノ粒子のサイズに依存する可能性を示した。以上から、本研究課題は当初の研究計画通りに進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、蛍光異方性測定を用いたアミロイドβと脂質ナノ粒子の結合測定、蛍光励起エネルギー移動を用いたアミロイドβ分子間会合の測定を行う。脂質ナノ粒子サイズが相互作用にどのように影響しているかを明らかにすることで、ナノ粒子上のアミロイドβ初期会合体の物理化学的性質を解明する。
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Causes of Carryover |
ペプチド固相合成器を購入予定であったが、研究室既設の合成器の混雑状況が緩和されていたため、本年度は購入を見送ることとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度は蛍光ラベルペプチドの合成が必要となるため、合成器の購入に充て、効率的な試料調製を行う予定である。
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Research Products
(7 results)