2016 Fiscal Year Research-status Report
核磁気共鳴法を利用したペプチドトランスポーター標的型がん診断プローブの創出
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16K18865
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
荒川 大 金沢大学, 薬学系, 助教 (40709028)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ペプチドトランスポーター / 尿中排泄率 / 簡易毒性試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
PEPT基質認識性および代謝安定性に優れたフルオロジペプチドの創製を目指し、第一段階として化合物の設計および合成を行なった。ペプチダーゼ耐性かつPEPT1およびPEPT2に良好な基質となることを過去に見出したジペプチドを基に、5種類のフルオロジペプチドの合成を行なった。これらのPEPT1およびPEPT2認識性をそれぞれのHEK293発現系を用いた取り込み試験により調べたところ、mockと比較し4種のジペプチドにおいて良好な取り込み活性が観察された。特に取り込み活性が高く、核磁気共鳴による感度が高いと考えられた二つのフッ素が導入された化合物Aを選択し、マウスを用いた単回投与による簡易毒性試験を行なった。マウス1匹に滅菌PBSにて溶解させた化合物Aを300 mg/mL/kg の投与量で尾静脈内投与し、24時間以内の状態・行動の観察を行なった。その結果、特筆すべき外観上の変化や致死性などは認められなかった。さらに毒性試験の結果を受け、尿中排泄試験を実施した。マウスに化合物Aを尾静脈内投与した後、自由に摂餌・飲水が可能なメタボリカ内で24時間飼育した。24時間分の尿を採取し、LC-MS/MSにて尿中に排泄された未変化体料を測定することで、尿中排泄率を算出した。測定の結果、尿中への未変化体の排泄率は約5%程度あり、期待していた値よりも低かった。そのため、代謝物として排泄されている可能性を含め、カラムの変更など現在測定系・測定方法等を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度として、合成したジペプチドがPEPT1およびPEPT2基質となることを複数見いだすことに成功し、簡易毒性試験でも問題ない結果が出ていることから、当初の計画通りに研究は遂行されていると考えられる。静脈内投与試験の結果、代謝による消失が示唆されたため、現在代謝物の同定を試みている。その一方で、代謝物が同様にPEPT基質となった場合も核磁気共鳴による画像診断が可能であること、また代謝物がPEPT基質とならない場合は、フルオロジペプチドのin vivoにおける半減期を考慮して投与すれば画像診断が可能であるため、全体的な計画に大きな影響は少ないと考えられる。一方で代謝が極めて早く、他の化合物を見いだす必要性に迫られた際は、代謝部位の同定を試み、代謝部位をマスクすることで今後の合成展開に応用する。
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Strategy for Future Research Activity |
代謝物が示唆されたため、質量分析器を用い、分子量情報から代謝物の同定を試みる。また、MRIによる腫瘍観察のため、以下の検討を行う。 ① in vitro 取り込み試験によるフルオロジペプチドのがん細胞への蓄積性評価 合成したフルオロジペプチドがPEPT発現がん細胞に高い集積性を持つか否かについて、in vitro取り込み試験により評価を行う。がん細胞としては PEPTが高発現している膵臓がんASPC-1細胞を中心に、種々のがん細胞株を用いてその集積性を検討する。また PEPT阻害剤を用い、がん細胞への集積性がPEPT によるものであるか否かについて調べる。 ② in vivo 腫瘍モデルによるフルオロジペプチドの腫瘍への集積性評価 フルオロジペプチドの生体モデルにおける腫瘍移行性を調べる。評価法として、ヌードマウスにASPC-1細胞などの種々のがん細胞を移植した腫瘍モデルを作製する。その後フルオロジペプチドの静脈内投与を行い、所定時間後に腫瘍へ蓄積された化合物量を定量する。その際、血漿中濃度も同時に測定し、腫瘍への蓄積性が血漿中濃度と比較して5倍以上を示す化合物を見出す。また脳、肝臓、腎臓、小腸などの通常組織における化合物移行性を評価する。
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