2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K18866
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
横川 真梨子 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 助教 (60648020)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | B型肝炎ウィルス / NMR / 構造生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
B 型肝炎ウイルス(HBV)に対する治療薬の開発は、全人類の課題である。HBVの感染は、HBVの外殻タンパク質が、肝細胞に特異的に発現しているNa+・胆汁酸トランスポーター(NTCP)と結合して細胞内に侵入することにより引き起こされる。したがって、HBVの外殻タンパク質とNTCPの結合様式を原子分解能で明らかにすることは、その結合の阻害に基づく画期的治療薬の開発に有用である。 本年度は、NTCPとの結合に重要なHBVの外殻タンパク質のpreS領域の大量発現・精製法を確立した。PreS領域の1H-15N HSQCスペクトルを測定し、理論数とほぼ同じ数のNMRシグナルが観測されていることを確認した。また、NMRシグナルが1Hの化学シフト値で狭い範囲に分布したことから、preS領域は単独では立体構造を形成していないことが分かった。現在、NTCPとの結合に重要なpreS1のNMRシグナルの帰属を進めている。帰属を確立できれば、NTCPとの相互作用を原子レベルでの解析するための基盤を得られる。すなわち、NTCPの添加によるpreS1のNMRシグナルの変化を解析することで、NTCPとの結合に寄与するpreS1上の残基を特定することができ、また、NMR法により分子内・分子間NOEシグナルの検出を行うことで、複合体の立体構造情報を得ることができる。 HBVのLタンパク質全長およびSドメインは発現系を確立し、目的タンパク質の発現をCBB染色で確認した。今後、精製法の確立・立体構造解析を進める予定である。 NTCPは発現系を確立し、目的タンパク質の発現をウェスタンブロット法により検出した。立体構造解析に向けて、収量増大の検討・精製法の確立を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HBV外殻タンパク質の調製に関して、preS領域は良好なNMRスペクトルの観測に成功しているため、NMRシグナルの帰属は比較的容易である。また、発現に困難が予想されたLタンパク質全長やSドメインについてはCBB染色で発現を確認できているため、構造解析に適したサンプルを調製できる可能性は比較的高いと考える。 NTCPの調製については、申請者の所属する研究室では発現量の増大や精製法の確立が必要であり、困難が予想される。しかし、共同研究者が大量調製に成功しているため、情報や試料提供を受けることで、研究を進展させることが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
HBV外殻タンパク質について、preS領域のNMRシグナルの帰属を行い、NTCPとの相互作用のNMR解析を行う。Lタンパク質全長やSドメインについては精製法を確立し、NTCPとの相互作用解析を行う。 NTCPについては、発現・精製法の検討を進める。上述の解析に用いるサンプルは、調製が間に合わない場合には、共同研究先から入手して行う。
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Causes of Carryover |
研究を進めた結果、一部の設備備品は購入が不要になったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画の遂行には、今後、予定よりも多額の界面活性剤や脂質などの消耗品が必要になることが分かったため、これらの消耗品を購入する予定である。
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