2016 Fiscal Year Research-status Report
リゾホスファチジン酸受容体LPA3による新規迷走神経制御機構の解明
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16K18870
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
可野 邦行 東北大学, 薬学研究科, 助教 (50636404)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ドコサヘキサエン酸 / リゾリン脂質 / 心筋梗塞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に、1)イメージング質量分析計を用いた虚血心臓のリゾリン脂質局在解析と、2)リゾホスファチジン酸受容体LPA3作動薬の抗炎症作用機構の解析を行った。 虚血心臓のイメージングからは、ドコサヘキサエン酸(DHA)結合型リゾリン脂質の心筋梗塞部位への蓄積とともに、一部のDHA含有ジアシルリン脂質の虚血部位での減少が明らかとなった。特にリゾリン脂質の中でもリゾホスファチジン酸(LPA)に着目すると、虚血部位で増加しているのはDHA-LPAのみであった。またLPA産生酵素オートタキシン(ATX)の阻害剤を用いた評価から、DHA-LPAの蓄積はATX非依存的であることが示唆された。 LPA3作動薬(T13)を用いた実験からは、敗血症モデルマウスへT13を投与することで抗炎症サイトカインの上昇、炎症性サイトカインの減少が認められることが明らかとなった。一方、予想外の点としては、この作動薬の作用はLPA3KOマウスでは部分的にのみ消失した。今回用いたLPA3作動薬T13は、高濃度ではLPA3以外のLPA3受容体に作用することから、複数のLPA受容体が抗炎症作用の発揮に関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の主な計画である心筋梗塞における不飽和型LPA(DHA-LPA)の産生機構の解明、LPA3によって制御される新たな迷走神経機能の解明について、両者ともに順調に進展している。 前者に関しては、従来知られているLPA産生酵素ATXが関与しないという興味深い知見を得ることができた。リゾリン脂質、ジアシルリゾリン脂質のイメージングの結果を受けて考えると、虚血部位では細胞内でDHA含有リゾリン脂質の蓄積が起きている可能性が示唆され、これを証明することができれば新規LPA産生経路を提唱できると考えられる。 後者に関しても、LPA3作動薬を用いた薬理評価は順調に進んでおり、この結果とKOマウスの結果を組み合わせて評価することで、真のLPA3を介した作用を見いだすことができている。
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Strategy for Future Research Activity |
虚血部位におけるDHA含有リゾリン脂質の蓄積機構の解析については、細胞内ホスホリパーゼの関与も視野に入れた評価を行う。既にその候補となるiPLA1の欠損マウスの導入手続きを進めており、平成29年度に解析可能である。また単離心筋細胞を用いたin vitroでの解析からそれ以外の候補酵素の可能性を検討していく。 LPA3の新規生理機能に関しては、予定どおり、LPA3作動薬を用いた際の迷走神経関連パラメーターの評価を行う。 また予想外の結果を得られたLPA3作動薬による抗炎症作用の解析については、LPA3以外の関与する受容体の同定を各受容体KOマウスを用いて進めるとともに、炎症時におけるLPAの産生変化についても質量分析計を用いて明らかにしていく。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Different origins of lysophospholipid mediators between coronary and peripheral arteries in acute coronary syndrome.2017
Author(s)
Kurano M, Kano K, Dohi T, Matsumoto H, Igarashi K, Nishikawa M, Ohkawa R, Ikeda H, Miyauchi K, Daida H, Aoki J, Yatomi Y.
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Journal Title
J Lipid Res.
Volume: 58
Pages: 433-442
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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