2017 Fiscal Year Research-status Report
オートファジーとアポトーシスを制御する新たな癌抑制遺伝子の発見
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16K18874
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
難波 卓司 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 准教授 (10729859)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 小胞体 / オートファジー / 癌 / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は以下の項目について検討を行なった。 1. BAP31による新たなオートファジーの誘導制御機構の解明 2. BAP31がミトコンドリアの機能に与える影響の解明 3. In vivoでのBAP31発現抑制による癌細胞増殖、及び転移の検討
1.についてはBAP31の発現抑制により誘導されるオートファジーの誘導が小胞体ストレスによるアポトーシスを抑制しているかを確認した。癌細胞は飢餓や虚血等のストレスに曝されることが知られていて、これは小胞体ストレス応答を誘導する。そこで、BAP31の発現抑制により誘導されるオートファジーを阻害剤で阻害したところ、小胞体ストレスによるアポトーシスを促進することが示唆された。以上の結果からBAP31の発現抑制により誘導されるオートファジーはストレスによる細胞の生存に関与していることが考えられた。2.についてはコントロール細胞とBAP31発現抑制細胞において、ミトコンドリア機能の指標となるミトコンドリアに局在するATP合成酵素とNADH脱水素酵素の活性を蛍光基質を用いた検出キットを用いて測定した。その結果、それぞれの酵素活性が低下し、ATPの産生量が低下していることが示唆された。しかし、長時間のBAP31の発現抑制は解糖系を促進し,ATPの産生を回復させることも示唆された。3.についてはBAP31のshRNAを恒常的に発現させBAP31の発現を抑制させた細胞を樹立した。さらにこれらの細胞のin vitroでの癌特性をmigration assayやinvasion assayで調べたところ、BAP31の発現抑制によりmigrationとinvasionが促進されことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ当初の計画通り研究を進めることができた。本年度はBAP31の発現抑制により、癌細胞の悪性度の指標ともなるmigrationとinvasionの活性が促進されることや、解糖系によるATPの産生が促進されるという興味深い知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1. BAP31がミトコンドリアの機能に与える影響の解明 BAP31の発現抑制によりオートファジーが誘導されるが、このオートファジーによりミトコンドリアが取り込まれ分解されている可能性も考えられる。そこで電子顕微鏡観察によりオートファゴソーム内にミトコンドリアが特異的に取り込まれているか、及びミトコンドリアをmitotrackerで蛍光染色し、細胞当たりのミトコンドリア数が著しく減少しているかを調べる。
2.ヌードマウスにおけるBAP31発現抑制株の生育、及び転移能を調べる。 BAP31発現抑制細胞とコントロール細胞、及びBAP31の発現が高い細胞と低い細胞をヌードマウスの皮下(肺癌細胞)、または膵臓(膵臓癌細胞)に移植し、その増殖を比較する。移植癌細胞は非常に強い低栄養状態にさらされる。また3日間隔で移植癌を回収し、オートファジー誘導を調べる。同時に癌細胞の転移についても肝臓や肺を中心にヒト由来の遺伝子をPCRで検出して検討する。一方正常細胞は移植しても増殖しないが、BAP31の発現を抑制することで増殖可能になるかにも注目する。転移に差があった細胞については、細胞をヌードマウスに静脈内注射し、肺における癌細胞の定着と生育について調べる転移モデルを用いて再検討する。
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Causes of Carryover |
今後は論文作成を早め、次年度における本研究成果の論文掲載費に用いる。
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