2017 Fiscal Year Research-status Report
アルギニンメチル化酵素PRMT5による心不全発症機構の解析と薬物治療への応用
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16K18876
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
刀坂 泰史 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (00583973)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アルギニンメチル化酵素 / 心肥大 / 心不全 |
Outline of Annual Research Achievements |
心疾患は我が国における死亡原因の第2位であり、なかでも心不全の克服は重要である。申請者らは心肥大から心不全発症における遺伝子発現を制御している心筋特異的転写因子GATA4の新規結合分子としてアルギニンメチル化酵素PRMT5とその活性制御因子MEP50を同定し、PRMT5/MEP50複合体が心不全発症に促進的に働くことを見出したが、治療薬の開発応用にはいまだ課題が多く残されている。本研究では、PRMT5/MEP50複合体による心肥大及び心不全発症の分子機構、およびPRMT5を標的とする心不全分子標的薬物治療の可能性を明らかにすることを目的とする。平成29年度の研究実施計画として、(1) PRMT5によるp300アルギニンメチル化の役割および (2) PRMT5阻害剤の治療効果の検討とした。in vitroメチル化アッセイにより、PRMT5によるp300のメチル化部位を同定した。さらにその変異体遺伝子を作成して、過剰発現する実験を行った結果、HEK293T細胞ではその変異体でもヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性に変化は認められなかった。またGATA4誘導性の転写反応にも変化は認められなかった。初代培養心筋細胞での検討が必要と考え、現在はノックインの方法論について検討を行っている。さらにPRMT5阻害剤を圧負荷誘導性心不全マウスに投与した結果、心機能の改善が認められた。今後は組織学的、生化学的解析を行い、より詳細な薬理効果と作用機序について解析を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
目的の一部が達成できておらず、研究としてはやや遅れていると考える。研究目的 (1) についてはメチル化部位の同定と遺伝子変異体の作成までは順調に進展したが、HEK293T細胞を用いた過剰発現モデルでは野生型p300との差がみられなかった。心筋細胞肥大に関する意義を検討したいので、初代培養細胞を使いたいが、遺伝子のサイズとトランスフェクションに問題があり、別の方法を用いる必要がある。方法論の検討に予定よりも時間がかかっている。研究目的 (2) については想定より順調に進展しており、当初の仮説通り、阻害剤により圧負荷モデルによる心不全の改善が認められた。より詳細に検討することで、心肥大および心不全発症におけるPRMT5の生体での機能と治療薬としての可能性を明らかにする。
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Strategy for Future Research Activity |
順調に進展しており申請書と特に大きな変更はない。 (1) GATA4誘導転写反応におけるp300アルギニンメチル化の役割 上記 (1)-2で作成したp300mutを用いて、アルギニンメチル化反応とp300/GATA4転写活性との関連性を検討する。野生型p300およびp300mutを培養細胞にて発現、PRMT5によるメチル化反応を誘導し、HAT活性やGATA4の転写活性を調べる。さらにp300mutノックインマウスとPRMT5-TGと交配させた遺伝子改変マウスを作成し、PRMT5による心不全促進が抑制されるかどうか調べる。本研究より、PRMT5によるp300アルギニンメチル化反応の重要性を明らかにする。 (2) PRMT5標的心不全治療の有用性 PRMT5阻害剤を圧負荷心不全マウスに経口投与し、超音波検査にて心機能を評価することで、PRMT5阻害剤の心不全治療効果を明らかにする。本研究より、PRMT5阻害剤の心不全治療効果を明らかにする。心機能については検討したが、組織学的、生化学的解析が未実施であるため、予定通りこれらを実施する。また体重変化や血液検査などで副作用についても検討する。
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Research Products
(1 results)