2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K18880
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
塩井 成留実 (青木成留実) 福岡大学, 理学部, 助教 (50510187)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生体防御機構 / 毒素阻害剤 / ヘビ毒タンパク質 / ヘビ血清タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、毒ヘビ血液由来毒素阻害タンパク質群(SSPs)の標的毒素分子認識機構および阻害機構を明らかにすることを目的としている。平成28年度の研究成果を以下に示す。 1、ハブ神経毒(triflin)と内在性阻害剤(SSP)の調整:ハブの粗毒または血液中から組換え体の活性評価に使用する天然triflinと天然SSPを精製した。また、大腸菌発現系を用いて組み換え体SSPとtriflinの合成を試みた。S-S結合に富むtriflinおよびSSPは不溶性分画として得られたため、両者ともに希釈法でリフォールディングを行った、その結果、巻き戻し効率約20%程度で調製に成功している。現在、NMR測定に可能な量を調整するため、合成条件を検討している。 2、神経毒素triflinの標的イオンチャネルを同定:パッチクランプ法による生理学実験よりL型Ca2+チャネルの発現量が多い正常細胞(平滑筋細胞A7r5)およびL型Ca2+チャネルを過剰発現させたHEK293細胞を用いて、triflinがL型Ca2+チャネルの電位依存性チャネル活性を阻害することを明らかにした。さらに、そのtriflinのチャネル阻害活性をSSPが抑制することを証明した。 3、コブラ科毒ヘビ由来の神経毒素とSSPとの相互作用解析:シンガポール国立大学KINI教授研究グループとの共同研究により、世界でも咬傷被害が多い毒ヘビのサンプル入手が可能となった。我々がクサリヘビ科(ハブ・マムシ)の血液中から見出したSSPが他の毒ヘビの毒素と相互作用するのかどうかをSSPを固定化したアフィニティクロマトで調べた。その結果、インドコブラ、タイコブラの粗毒中にSSPと特異的に結合する分子が存在を確認した。現在その毒素の同定を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ジスルフィド結合が多いヘビ毒素(triflin)および毒素阻害タンパク質(SSP)の組換え体調整法確立には予定以上に時間を費やした。ドメイン別発現の検討、また封入体のリフォールディング効率を上げるための条件検討が必要だったため、変異体解析がやや遅れている。一方、平成28年度には2つの毒素関係の国際学会に参加し、当該研究の成果発表を行った結果、ヘビ毒素研究を網羅的に行っている研究グループが興味を示し、国際的共同研究の機会を得ることができた。そのため、日本では入手しにくい毒ヘビの粗毒および血液のサンプルを取り扱って研究することが可能となった。予備実験より本研究対象のヘビ毒阻害タンパク質SSPが世界でも咬傷被害が多い毒ヘビ(コブラ、ガラガラヘビ)に対しても応用できることが示唆された。以上のことより申請書に記載した研究計画も含めて本研究の進捗状況はおおむね順調であり、平成29年度は申請書に記載した計画に沿って円滑に研究を推進でき、さらに国際的な共同研究により蛇毒阻害剤SSPの治療薬としての波及性が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、SSPの機能性を活かしたペプチドまたは低分子化合物をデザインし、毒ヘビ咬傷に対する新薬開発の基盤を確立することを目標としており、平成29年度の研究計画の内容を下記に示す。 1、神経毒阻害薬開発のための候補分子(ペプチド)のデザインとスクリーニング ファージディスプレイ法を用いて、変異体解析の情報より得られた結合及び阻害に必須な残基をランダマイズしたライブラリを作製する。この実験では、そのファージライブラリから、ヘビ毒神経毒素と結合するファージをパンニング法で単離する。結合能がより高いものやより強い阻害活性を示すものが単離できることが期待される。ファージはT7ファージおよびM13ファージを、宿主細胞にはプラスミドpAR5403を含む大腸菌Origami, SHaffleなどを用いる。 2、安定同位体ラベルSSPのNMRケミカルシフト解析を行う。 変異体の構造安定性の評価や毒素と阻害剤の溶液状態の相互作用について情報を得るために、NMRを用いて特定残基のケミカルシフトを測定する。具体的には平成28年度の研究成果を参考に、大腸菌発現系を用いて希釈法によるリフォールディングを行い、13C, 15N標識阻害タンパク質SSPを調製し、天然ハブ毒triflinやハブ血液中の相互作用分子HSFの添加実験を行う。
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