2018 Fiscal Year Research-status Report
ステロイド誘起性うつ病における病態実験モデル構築と治療薬の評価
Project/Area Number |
16K18888
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
寺田 一樹 福岡大学, 薬学部, 助教 (00724197)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | シグマ受容体 / 神経突起伸展 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、副腎皮質ステロイド剤によって誘起されるうつ症状について、その発症機序および治療薬への知見をin vitroおよびin vivoモデルにより見出し提案することにある。 本年度では、in vitroモデルとしてPC12細胞を用いた神経突起伸展作用に対する中枢疾患治療薬の効果評価を行った。ステロイド剤であるデキサメタゾンによる神経突起の伸展抑制に対して、すでに臨床で用いられる抗うつ薬を中心に検討を行った。まず、抗うつ薬においては、 SSRIとして分類される薬剤において神経突起伸展に対する増強、減弱または無効の作用を有するものが確認された。また、SSRIらの神経突起伸展に対する作用はシグマ受容体のサブタイプ1を介していることを明らかにし、その結果について国際誌にて報告した 。一方、デキサメタゾンによる神経突起伸展の抑制に対しては、SSRIは改善作用を有していた。驚くべきことに、神経突起伸展に負の作用を有していたSSRIにおいてもデキサメタゾンによる抑制に対して改善作用を有していることが明らかとなった。また、抗うつ薬以外の薬剤についてスクリーニングした結果、アルツハイマー治療薬であるドネペジルやリバスチグミンも同様に神経突起伸展の増強作用を有していることが明らかとなり、中でもリバスチグミンはこれまで未知であったシグマ受容体のサブタイプ2に作用を有していることを初めて報告した。本年度の結果は、ステロイド誘起性うつ病に対して、シグマ受容体が重要なターゲットとなることを支持している。現在、最終年度に向けたデータ整理を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では、PC12細胞を用いた検討によって新たな知見を得ることができた。本研究の目的であるステロイド誘起性うつ病に対して、シグマ受容体が重要なターゲットとなることが明らかとなった。現在、シグマ受容体の昨日に関して既知のものと今回新たに得た知見について慎重に精査を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までに、本研究の目的であるステロイド誘起性うつ病に対する治療ターゲットとして、シグマ受容体をピックアップし、またそれらを支持するデータを得ることに成功した。一方で、シグマ受容体に関しては未だ未知の部分が多く、機能の大半は明らかとなっていない。したがって、最終年度に向けてシグマ受容体に関する新たな知見を報告すべく準備を行っている。
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Causes of Carryover |
当初計画よりもin vitro実験において大きな成果を得ることとなった。そのため予定していたin vivo実験を行わなかったため使用額を計上せず次年度へ繰り越すこととした。 使用計画として、in vivoのデータを加えこれまでに蓄積したデータを国際誌に報告するために用いる予定である。
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