2016 Fiscal Year Research-status Report
RANKL 依存的な破骨細胞の分化を阻害する天然有機化合物の探索
Project/Area Number |
16K18898
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
加藤 光 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 助教 (20547129)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 破骨細胞分化 / 阻害剤 / インドールアルカロイド / セスキテルペン |
Outline of Annual Research Achievements |
骨粗鬆症は、破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成のバランスが崩れ、骨吸収の亢進により骨量が減少し、骨折の危険性が増大する疾患である。骨粗鬆症治療薬の創薬標的として、近年、RANKL/RANK シグナル伝達系が注目されており、2013 年に初めて RANKL のモノクローナル抗体医薬品であるデノスマブが承認された。このシグナル伝達系の阻害により破骨細胞の形成が阻害されると、その結果、骨吸収が阻害されるので骨粗鬆症の治療につながる。本研究では、RANKL依存的な破骨細胞の形成を阻害する化合物を天然資源から探索し、得られた化合物の阻害機構を調べている。 破骨細胞では、TRAP が高発現しているので、TRAP 活性を破骨細胞のマーカーとして使える。そこで、この TRAP 活性を指標に破骨細胞の形成阻害活性を調べた。当研究室では、これまでに骨粗鬆症の医薬品リード化合物の探索を目的として、日本やインドネシアで採取した海綿、微生物および植物のエキス (約4,500種) についてTRAP活性を指標にスクリーニングを行った。そして、インドールアルカロイドである (-)-および (+)-6-epi-notoamide T (1) が破骨細胞の分化を強く阻害していることを発見した (IC50 値はそれぞれ 1.7 および 4.4 uM)。そこで、1の阻害機構を調べることとした。しかし、これまで認められていた分化阻害活性が現在認められず、原因を究明している段階である。 一方で、当研究室で保有している薬用資源ライブラリーからより強力な阻害物質を発見した。Artemisia属植物に含まれるdavanoneは IC50 値で 0.5 uM の強い阻害活性を示すことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当時、破骨細胞の分化を阻害していた 6-epi-notoamide T (1) について活性の再現性がとれていないため、1 の阻害機構を調べる実験へと展開できていない。 しかし、当研究室で保有する薬用資源ライブラリーから新たな阻害剤である davanone を見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当時、破骨細胞の分化を阻害していた 6-epi-notoamide T (1) について、活性の再現性が認められていないので、その原因を究明する。1 が阻害活性を示すことはこれまでに何度も確認できていたので、当研究室の活性試験において制御しきれていない要因があると考えている。 また、当研究室の薬用資源ライブラリーから見出された Artemisia 属植物由来の davanone は 1 よりも活性が強いことが分かっている。本 Artemisia 属植物のエキスには davanone の類縁体も多く含まれていることがわかっているので、それらの類縁体を単離して構造活性相関を調べる。そして、医薬品シーズとして期待ができそうであれば、生化学的な実験へと展開して阻害機構を調べる予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は少ないので、おおよそ計画通りに助成金を使用できたと考えている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
予定通り、消耗品を含む物品費として使用する。 消耗品としては、破骨細胞分化の阻害剤を天然資源から探索するため、多くの有機溶媒を購入する予定である。
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