2016 Fiscal Year Research-status Report
がん転移・再発予防を指向した「柿蔕」のアジュバント療法への利活用に関する基礎研究
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16K18904
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Research Institution | Matsuyama University |
Principal Investigator |
好村 守生 松山大学, 薬学部, 講師 (80454891)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 柿蔕 / 縮合型タンニン |
Outline of Annual Research Achievements |
柿蔕の既知成分としてはトリテルペノイドやフラボノイドなどが知られているが,それ以外の成分,特にタンニンの詳細は明らかにされていない.柿の果実や葉には構造不特定な縮合型タンニンの存在が知られていることから,柿蔕の高極性成分を中心とした成分精査を行った. 当初の研究目的では,柿蔕の熱水抽出物を用いて成分精査を行う予定であったが,熱水抽出では得られる化合物の収量に乏しく,次年度以降の活性評価の困難が想定されたため,柿蔕の70%アセトン抽出物の精査で得られた化合物を標品としたHPLC直接比較による柿蔕熱水抽出物の成分同定を行うこととした.その成分精査の結果,4種の低分子フェノール類,6種のフェニルプロパノイド,12種のフラボノイド,2種の縮合型タンニンを単離するとともに,文献未記載の化合物1種を単離し,その構造を明らかにした. 柿蔕の熱水抽出物のHPLC分析を行った結果,特徴的なピークを認めず山なりのバックグラウンドが観察されたため,その主成分は縮合型タンニンであると推定された.そのため,柿蔕の熱水抽出物の13C-NMR長時間測定を行った結果,catechinユニットに対応するケミカルシフトにブロードなシグナルを観察したことから,縮合型タンニンの存在を確認した.加えて,本画分のチオール分解物のHPLC分析から,縮合型タンニン画分はB環カテコールタイプとピロガロールタイプが約2:1で構成されていると示された.また,同画分のGPC分析を行った結果,その平均分子量は30,482と算出されたことから,柿蔕には高度に重合した縮合型タンニンの存在が明らかになった. 柿蔕湯煎液と柿蔕湯エキス製剤に含まれる成分をHPLC分析で比較した結果,両者にgallic acid, ellagic acidなどを主成分として認めたが,柿蔕湯エキス製剤には柿蔕湯煎液に確認されたeugenolを検出しなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
柿蔕の成分精査は順調に行えており,23種の化合物を標準品として得ているが,柿蔕湯のHPLC分析結果から,その主要成分の複数はチョウジの熱水抽出物に含まれる成分と同様であると判明した.チョウジの成分精査は過去に行っているため,チョウジの主構成成分に関する情報は有しているが,熱水抽出物ではそれら主成分の分解物と想定される化合物が主要成分として確認されたため,新たにチョウジの熱水抽出物の成分精査を行う必要性が生じた.そのため,次年度の生物活性評価に供する標準品の確保を現在行っている.
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Strategy for Future Research Activity |
チョウジの熱水抽出物の成分精査を行い,生物活性評価に供する標準品の確保を行うとともに,各種ヒトがん細胞およびヒト正常腸上皮細胞に柿蔕湯構成生薬の主要成分,柿蔕タンニン,柿蔕湯煎剤,柿蔕湯エキス製剤を添加して培養を行い,細胞生存率をMTT法で測定することで抗腫瘍活性を評価する.
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Causes of Carryover |
消耗品の購入を効率的に行うことができ,支出を削減できたため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
培養細胞の購入に用いる.また,アッセイキットを購入することで,より効率的な評価を行う.
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