2016 Fiscal Year Research-status Report
がん選択的化学療法の実現を目指した細胞内滞留型プロドラッグの開発
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16K18909
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
堂浦 智裕 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00745226)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | プロドラッグ / 卵巣がん / 化学療法 / プロドラッグモノセラピー / b-ガラクトシダーゼ / チューブリン重合阻害剤 / コンブレタスタチンA4 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、チューブリン重合阻害剤であるコンブレタスタチンA4(CA4)を基盤とした卵巣がん細胞を標的とするプロドラッグの開発研究を行った。 初めに、b-ガラクトシダーゼ活性が亢進している卵巣がん細胞を標的としたプロドラッグとしてCA4-bGal-1とCA4-bGal-2を設計・合成した。これらは共に分子内にb-ガラクトシル基をもち、b-ガラクトシダーゼによりb-ガラクトシル基が除去されることにより生物活性分子であるCA4を遊離する。また、CA4-bGal-2では自己解離性スペーサーとして1,6-ベンジル基をCA4とb-ガラクトシル基の間に挿入した。関連文献を参考にこれらの化合物を合成した。 次に、in vitroでの酵素反応に関する検討をHPLCにより実施した。その結果、b-ガラクトシダーゼによりこれらの化合物はそれぞれ分解され、CA4がin vitroで生成したことが確認された。この結果より、これらの化合物がb-ガラクトシダーゼ活性をスイッチとするプロドラッグとして機能することが示された。 次に、卵巣がん細胞を使用したプロドラッグ類の細胞傷害活性に関する検討を行った。実験の結果、これらは共に卵巣がん細胞への細胞傷害活性を示したが、CA4-bGal-2の方がCA4-bGal-1よりも強い細胞傷害活性を示した。この原因として、自己解離性スペーサーによるCA4の効率的な遊離、分子の疎水性が向上したことによる細胞内への浸透性の向上が考えられる。また、酵素阻害剤を使用した実験により、卵巣がん細胞への細胞傷害活性は、卵巣がん細胞のb-ガラクトシダーゼ活性に依存していることを実証した。 以上、初年度の研究においてb-ガラクトシダーゼ活性が高い卵巣がん細胞の特徴を利用したプロドラッグの設計戦略が卵巣がんの化学療法に有効であることを実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、卵巣がん細胞において亢進しているb-ガラクトシダーゼを標的としたプロドラッグCA4-bGal-1とCA4-bGal-2を設計・合成し、in vitroでの評価、卵巣がん細胞やb-ガラクトシダーゼ阻害剤を使用した評価を行うことにより、本戦略が卵巣がんの化学療法に有効であることを示すことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究は、当初の達成目標に到達した。しかしながら、初年度の研究を通して今後の研究計画に関わる課題が2点明らかとなった。 1点目は、細胞傷害活性分子として使用したCA4の不安定性である。CA4はスチルベン構造の分子であるため、光や熱によりシス-トランス異性化が起きる性質があり、異性化の進展と共に細胞傷害活性が低下する。そのため、平成29年度以降の研究においては細胞傷害活性分子をCA4と同程度のチューブリン重合阻害活性をもち、かつ光や熱に対して安定な5-hydroxy-2-aroylquinolineに変更することによりこの課題を克服する予定である。 2点目は、卵巣がん細胞への不十分な標的化である。初年度の研究においてb-ガラクトシダーゼ活性を利用した卵巣がん細胞へのプロドラッグの標的化を達成したが、卵巣がん細胞における本酵素活性は正常細胞における本酵素活性と比較して必ずしも十分に高いとは言えず、また個々の卵巣がん細胞によっても酵素活性の高さは異なる。そのため、平成29年度以降の研究においては、b-ガラクトシダーゼ活性に加えて卵巣がん細胞における高発現が報告されている葉酸受容体を利用した標的化を実施する予定である。 以上より、当初の研究計画とは異なるが、平成29年度以降の研究においては光や熱に対して安定でかつ強力なチューブリン重合阻害剤である5-hydroxy-2-aroylquinolineを基盤とした卵巣がん細胞を標的とするプロドラッグの開発研究を行い、亢進しているb-ガラクトシダーゼ活性と高発現している葉酸受容体利用した二重標的化が卵巣がんのプロドラッグモノセラピーに有効であることを実証する。
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Causes of Carryover |
試薬の購入費などの物品費に充てることを主な目的として交付金を申請したが、当初の想定よりも試薬の消費量を少なく抑えることができたため、上記の次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は遠方での学会発表等を複数回予定しているため、生じた次年度使用額をそれらの旅費に充てることを計画している。
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Research Products
(3 results)