2016 Fiscal Year Research-status Report
ヒストン変異癌のケミカルエピジェネティクス:リジンメチル化モジュレータの創製
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16K18913
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
薬師寺 文華 北海道大学, 薬学研究院, 講師 (40548476)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ドライバー遺伝子変異 / ヒストンメチル化 / スクリーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、小児脳幹グリオーマドライバー遺伝子変異であるヒストン H3 K27M に着目し、ヒストン H3K27 メチル化モジュレータを創製することで、ガン細胞のケミカルエピジェネティクスを行うことを目的としている。これより、ヒストン H3K27 メチル化増加を念頭に置いた 1) ヒストン H3K27 メチル化酵素活性促進剤、2) ヒストン H3 K27M 機能阻害剤の獲得を試みる。 ヒストン H3K27 メチル化酵素 (PRC2) 活性を促進する化合物を見出すべく、生化学的ハイスループットスクリーニング(ヒストン H3K27 ジメチル化の抗体検出)を行った。約 6 万個の化合物に対してスクリーニングを行った結果、PRC2 活性を約 1.5 倍促進する化合物を数種見出すことができた。いずれも類似したケモタイプであったことから、有機合成化学的手法を用いて合成し、同様の in vitro での酵素アッセイ系で再試験を行ったところ、濃度依存的にPRC2 によるヒストンメチル化を亢進することが明らかになった。さらに、本ヒット化合物をもとに構造活性相関研究へと展開することで、約 3 倍強い活性を示す化合物を得ることができた。 一方で、化合物アレイを用いてヒストン親和性化合物の探索を行うこととし、ヒストン H3、ヒストン H3 K27M および対照としてヒストン H2B を用いた約 2 万個の化合物に対するスクリーニングを実施した。その結果、ヒストン H3 に親和性を示す化合物として計 9 種を見出すことができた。再合成を完了後、再合成化合物のヒストン H3 および K27M 変異体に対する親和性評価を等温滴定型カロリメトリーにより評価したが、再合成した化合物においてスクリーニングで得られた結果は再現できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、生化学的スクリーニングにより見出された PRC2 活性促進作用を示すヒット化合物の構造最適化を実施した。当初の計画通り、1) ビフェニル部位の末端フェニル環の除去、あるいは複素環の導入、2) 2 級アミン部位への置換基導入による酵素活性促進作用への影響検討、3) ベンジル置換基部位の最適化、を行った。PRC2 によるヒストンメチル化活性は、トリチウムでラベルされた S-アデノシルメチオニンを用いた放射活性測定試験により評価した。 種々検討した結果、ヒット化合物の置換部位を変更することで3次元的構造を変化させたところ、所望の PRC2 活性を亢進する化合物の獲得につなげることができた。本手法によりヒット化合物とくらべ、約 3 倍の活性向上となり、その濃度依存性も確認した。現在は、細胞を用いた機能評価へと展開している。 一方で、化合物アレイを用いてヒストンおよびヒストン変異体に親和性を有する化合物の獲得を試みた。約 2 万個の化合物に対してスクリーニングを行ったところ、ヒストン H3 に親和性を有する化合物として計 9 種を見出すことができた。母骨格が類似している 6 化合物について全 6 工程で再合成を完了後、再合成化合物のヒストン H3 および変異体に対する親和性評価を等温滴定型カロリメトリーにより評価した。しかしながら、再合成した化合物においてスクリーニングで得られた結果を再現することはできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成 29 年度は、構造最適化研究により見出した PRC2 活性を亢進する化合物を用いて、タンパクとの親和性評価および細胞を用いた機能解析を行う。具体的には、等温滴定型カロリメトリーあるいはバイオレイヤー干渉法を用いて、化合物とヒストンメチル化酵素の親和性を評価する。また、構造最適化研究を繰り返すことで、濃度依存性、酵素選択性等を総合的に評価し、リード化合物の獲得を目指す。 一方、ヒストン H3 K27M 機能阻害剤の開発では、現在再スクリーニングの実施や化合物の獲得に向けた新規アッセイ系の確立を試行している。ヒット化合物を獲得できたら、ヒストンタンパクとの親和性を評価する。さらに、先に述べた放射活性試験を用いてペプチドを加えた競合条件下、PRC2 メチル化活性を評価する。同様に、濃度依存性等を評価し、構造最適化研究へと展開する。
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