2016 Fiscal Year Research-status Report
HIV粒子内への逆転写プライマー取込み阻害因子を基盤とする多剤耐性克服戦略
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16K18922
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
岸本 直樹 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 助教 (80756148)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | HIV-1 / 宿主因子 / GAPDH / 逆転写反応 / tRNALys3 |
Outline of Annual Research Achievements |
HIV感染症/AIDSの治療において、HIV感染様態の最大の特性である易変異性を克服できていないことから、薬剤耐性ウイルスの出現による「治療失敗」の例が後を絶たない。これは、既存薬の多くがウイルス性因子を標的としていることに起因している。したがって、多くの治療薬が創出されている現在においても、既存薬とは異なる薬剤の開発が求められている。そこで、ウイルス性因子ではなく、あえて宿主性因子を標的とした新しいHIV治療戦略の構築を目指し、HIV複製を制御する宿主性タンパク質の探索を行い、これまでに解糖系酵素として知られているglyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase(GAPDH)が逆転写反応の開始を阻害することを見出した。 本研究では、GAPDHによるtRNALys3取込み阻害機構の詳細を明らかにすることを目的とした。GAPDHとHIV前駆体タンパク質の相互作用面を同定するために、yeast two-hybrid(Y2H)法とin silicoドックングシミュレーションを行い、GAPDHのC末端領域に存在するヘリックスがウイルス前駆体タンパク質のmatrix protein(MA)領域およびcapsid protein(CA)のN末端領域と相互作用することを示唆する知見を得た。そこでGAPDH、MAまたはCA変異体を作製し、再度Y2H法を行ったところ、相互作用を消失する変異体が得られた。さらに、相互作用が消失したGAPDH変異体を強制発現させた細胞より産生されるウイルスでは、予想通りtRNALys3取込みが上昇し、感染価も上昇した。これらの結果は、GAPDH のC末端領域がウイルス前駆体タンパク質のMAおよびCA領域と相互作用することで、tRNALys3のウイルス粒子内への取込み阻害機能を発揮していることを強く示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、GAPDHとウイルス前駆体タンパク質の相互作用残基の同定をY2H法とin silico解析により行った。そして、Y2H法とin silico解析を相互に行い精査することで、これらふたつのタンパク質の相互作用残基を同定した。また、これら残基への変異を導入しGAPDHの細胞内での発現は、GAPDH過剰発現時に低下するウイルス粒子内へのtRNALys3取込みを回復させた。これらの結果より、GAPDHとウイルス前駆体タンパク質の相互作用モデルを構築できたことから、おおむね計画通りに研究を展開できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果より、GAPDHはそのかさ高さによってウイルス前駆体タンパク質を介したtRNALys3のウイルス粒子内への取込みを阻害していることが想定される。そこで、GAPDHによるtRNALys3取込み阻害機構を増強する方法を目指す。計画書に則り、GAPDH4量体を安定化させる、またはGAPDH多量体形成を促す候補化合物をY2H法とin silico解析を基に行う。さらに、得られた候補化合物を HIV 産生細胞に処理し、HIV 感染インジケータ細胞を用いた感染阻害効果の有無や定量的PCRを用いたtRNALys3取込み量の減少の有無等を評価し、tRNALys3 取込み 阻害効果が見られたものに関しては、ヒト末梢血単核球を用い薬剤耐性株での評価を行う。
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Causes of Carryover |
相互作用解析に用いる抗体を購入予定であったが、熊本地震の影響で2016年度中には行えなかったため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は抗体の購入に用いる。購入した抗体を用いた解析の結果を踏まえ、プライマリー細胞を用いた実験を見据えて助成金を使用する。
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Research Products
(13 results)