2016 Fiscal Year Research-status Report
慢性腎障害時の肝膜輸送体・薬物代謝酵素の系統的な活性変動の解析と予測法開発
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16K18934
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
増尾 友佑 金沢大学, 薬学系, 助教 (90708140)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 膜輸送体 / 慢性腎障害 / メタボローム解析 / 薬物動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝消失型薬物の一部は、血漿中からの消失が慢性腎障害時に遅延する。この原因として、申請者らは、慢性腎障害患者の血漿中に存在する尿毒素に、一部の肝膜輸送体や薬物代謝酵素の機能を直接阻害またはmRNA発現量を低下させる作用があることを報告した。阻害作用の程度はいずれも比較的弱かったことから、本研究では、既知の尿毒症物質以外の阻害作用を有する化合物を探索した。まず、既知の尿毒症物質との構造類似化合物群に関して、HEK293/OATP1B1細胞を用いて肝膜輸送体OATP1B1阻害作用をスクリーニングしたところ、OATP1B1の阻害作用を有する化合物を確認した。本化合物の血漿中濃度をLC-MS/MSで測定したところ、高度に腎機能が低下した患者群において、正常な腎機能の患者群よりも血漿中濃度が高かった。この化合物によるOATP1B1阻害作用は持続的であり、プレインキュベーション時のみに添加した際にも阻害作用が確認された。さらに、本化合物は、ヒト初代培養肝細胞においてもestrone 3-sulfateの細胞内取り込みを阻害した。本化合物は、慢性腎障害時に血液中に蓄積することでOATP1B1の機能阻害を引き起こすことが示唆された。そこで、OATP1B1の慢性腎障害時の活性変化を定量的に予測可能な血漿中バイオマーカーを同定すべく、メタボローム解析によるOATP1B1の生体内基質の探索を開始した。HEK293/OATP1B1をマウス肝臓組織画分とインキュベーションし、細胞ライセートをLC-TOF-MSで測定し、OATP1B1阻害剤の非存在下で高いシグナルを示したイオンを同定した。現在、化合物標品を用いた輸送活性を評価中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究でOATP1B1の阻害作用を有する新たな尿毒症候補化合物が見つかった。また、次年度に予定していたOATP1B1生体内基質の探索を開始しており、既に候補化合物が同定されており、今後も研究計画の達成が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
膜透過や薬物代謝等の機能変化と遺伝子発現の変化の両方を検討できる最も生理的な実験系として、初代培養ヒト肝細胞を用いる。40余名より採取した慢性腎障害患者血漿とともに培養後、肝膜輸送体および薬物代謝酵素のプローブ基質をカクテル添加し、基質の取り込みまたは代謝活性を評価することで、慢性腎障害時の膜輸送体、薬物代謝酵素の活性変化を系統的に解明する。肝膜輸送体または薬物代謝酵素の活性変化を定量的にモニターできる血漿中のバイオマーカー化合物を、膜輸送体発現系または薬物代謝酵素組み換えタンパク質発現系を用いて同定する。さらに、同定されたバイオマーカー候補化合物の濃度を、慢性腎障害患者血漿と健常人ヒト血漿で比較し、その妥当性を検証する。
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