2016 Fiscal Year Research-status Report
低体温療法時の薬物組織移行性の変動要因解明と組織中薬物濃度予測法の構築
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16K18947
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
宮元 敬天 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 助教 (20619481)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 低体温療法 / タンパク結合率 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は血中タンパクおよび組織中タンパクと薬物の結合性に与える温度低下の影響を中心に研究を行った。ラット血清タンパクとミダゾラムの結合性について平衡透析法により評価したところ、温度低下時においてミダゾラムのタンパク遊離型分率が37℃と比較し半減することが明らかになった。ラット血清を用いた評価では血清中に豊富に含まれるアルブミン以外にも薬物との結合性を有するタンパクが存在するため、温度低下の影響を解析するうえで問題があった。そこで、Bovine Serum Albuminをモデルタンパク質として用い、ミダゾラムに加え水溶性やタンパク結合率が異なる4-nitrophenol、Phenolsulfonphthaleinとの結合性を評価した。すべての薬物において、低温時にはタンパク遊離型分率が低下することが明らかとなった。また、タンパク質と薬物の結合部位数や結合親和性を評価するためにスキャッチャードプロットを作製し、これらのパラメータを算出したところ、結合部位数は温度低下の影響を受けなかったのに対し、結合親和性は温度低下時に変化することが明らかとなった。この要因として低温時におけるタンパク質のコンフォメーション変化が生じるのではないかと考え解析を進めている。 さらに、腎排泄型薬剤低体温時における体内動態について解析を行っている。おもに糸球体ろ過により排泄されるFITC-dextranの血中濃度は低体温時に上昇し、尿中排泄量が低下することを明らかにしている。また、温度低下により受ける影響は分子量によっても異なることが明らかになっているため、分子量と温度低下の影響について解析を進める必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り薬物のタンパク結合についての解析を進めており、血中タンパク質と薬物の結合性について評価している。組織タンパク結合に関しては組織ホモジネートを作製した際に生じる低分子量のタンパク質が透析中に漏出するため、実験条件の最適化を進めている。 また、腎排泄型薬剤の体内動態についても解析を進めており、今後臨床にて使用される薬剤の体内動態を評価していく。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は低温時における薬物とタンパクの結合についての解析を進める一方で、腎排泄型薬剤であり低体温療法中に使用されるバンコマイシンの体内動態についても評価を行う。バンコマイシンは副作用として急性腎障害を生じることが報告されていることから、低体温時におけるバンコマイシンの血中濃度に加え、臓器組織中濃度を定量する。さらに組織染色を行い腎臓などの臓器障害の有無についても定性的に評価する。
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Causes of Carryover |
タンパク結合の評価を行う際に使用するアルブミンの濃度や使用量の最適化を行った結果、当初計画より少ない量で実験が可能となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
腎排泄型薬剤の体内動態評価を行うための試薬購入を行う予定である。
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