2016 Fiscal Year Research-status Report
気管支喘息および慢性閉塞性肺疾患の新たな病態分類に基づいた個別化薬物療法の構築
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16K18949
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
平井 啓太 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (30740203)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 気管支喘息 / 慢性閉塞性肺疾患 / ヘルパーT細胞 / 遺伝子発現解析 / クラスター解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
喘息と慢性閉塞性肺疾患 (COPD) を合併する喘息・COPD オーバーラップ (ACO) は各々の単独症例に比べ疾患増悪リスクが高いことが報告されている。しかし、疾患を規定する境界が不明瞭であることから、ACOの診断基準は構築されておらず、薬物療法の最適化に関する検討はされていない。本研究はACO、気管支喘息およびCOPDを現在の疾患区分に依らず、分子病態型解析および遺伝子型解析により疾患を層別化し、疾患増悪因子および治療抵抗性因子を明らかにすることを目的としている。 初年度は、ACOの診断に有用なマーカーについて検討を行った。喘息患者152名およびCOPD患者50名を対象に採取した血液より末梢血単核球を分離し、ヘルパーT細胞転写因子の遺伝子発現量を定量した。さらに、遺伝子発現量、末梢血白血球分画および患者背景因子を共変量としクラスター解析を行った。その結果、202名の患者は4つのクラスターに分類され、そのうち1つは喘息様所見およびCOPD様所見の両方を有し、ACOの特徴を示すクラスターであるものと考えられた。ACOクラスターを鑑別する因子として、非特異的IgE濃度 ≧310 IU/mL、末梢血好酸球数 ≧280/μL、TBX21 mRNA/GATA3 mRNA比高値、Pack-years ≧10および1秒率 <0.67が抽出され、その予測精度はROC解析において、AUC 0.94、感度86%および特異度91%であり、高い精度で鑑別できることが示された。 本研究成果はACOのフェノタイプを特徴づける新たな知見であり、喘息およびCOPD患者の層別化治療に寄与するものと考えられる。 今後はさらに、炎症病態や薬物応答性に関連する分子の遺伝子多型解析を行い、疾患増悪因子および治療抵抗性因子に関し検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
症例の集積はおおむね完了しており、初年度の目標は一定の水準で達成している。また、次年度以降に行う予定でいる遺伝子解析等の解析系についてもほぼ確立している。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引続き同様な研究体制で研究を継続する。 炎症病態や薬物応答性に関与する遺伝子において多型解析を行い、さらに炎症性マーカーや酸化ストレスマーカーについて定量解析を行う。また、症例登録後の増悪発現および肺機能検査値の変化を記録し、疾患増悪発現に関与する因子を検討する。
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Causes of Carryover |
得られた研究成果を国際学会および研究論文として次年度に発表するため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国際学会への旅費および論文投稿費用として使用する。
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Research Products
(4 results)