2016 Fiscal Year Research-status Report
ホルモン感受性乳がんにおけるエストロゲン供給経路の分子基盤
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16K18951
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
保嶋 智也 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 助教 (50753555)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | エストロゲン硫酸 / 促進拡散 / 小胞体 / トランスポーター |
Outline of Annual Research Achievements |
乳がん細胞へのエストロゲンの供給は、主に血液中に存在するエストロゲンの硫酸抱合体(エストロゲン硫酸)に依存し、細胞膜に発現する有機アニオントランスポーターを介して行われている。供給されたエストロゲン硫酸の多くは細胞内に滞留するが、それ自体はエストロゲン受容体の基質とならないため、エストロゲンとしての生理活性の発現には脱硫酸抱合化が必須となる。その反応を触媒する酵素としてsteroid sulfatase (STS)がある。STSは、乳がん組織で顕著な発現増加が認められ、その程度と予後の間には有意な相関性が見出されている。STSは分子内に膜貫通領域を有する膜蛋白質であり、小胞体膜にのみ分布する。興味深いことに、STSの基質結合部位はluminal側(小胞体内腔側)であることから、細胞質に存在するエストロゲン硫酸はSTSの活性部位と相互作用することはできず、その酵素反応においては、小胞体膜の透過過程が必須となる。小胞体膜も細胞膜と同様、脂溶性の高い膜構造であるため、高親水性であるエストロゲン硫酸は、単純拡散では、ほとんど小胞体内に移行しないと考えられ、トランスポーターの関与が疑われる。そこで、申請者らは当該トランスポーターの同定を試み、検討を進めたところ、候補遺伝子を見出すことに成功し、本遺伝子産物をsteroid sulfate transporter 1(SST1)と命名した。 2016年度の研究活動により、SST1の機能把握に進展が見られた。輸送様式としては、SST1は促進拡散的にエストロン硫酸を輸送することを見出した。また基質認識性を把握するため、各種阻害剤の影響を検討したところ、ステロイド骨格を有する生体内化合物や、甲状腺ホルモンによって強力に阻害された。このことは、これら生体内化合物が生体内のエストロゲン濃度を制御していることを示唆する結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に実施予定だった①ヒトSST1の輸送特性の把握②ヒトSST1の阻害剤の探索はほぼ完了でき、興味深い結果も得られた。また、③エストロゲン受容体のレポーターアッセイ系を用いたin vitroにおけるSST1の機能評価についても着実に実施しており、徐々に結果が出つつある。予備検討を慎重に実施したことの影響から、本項目については次年度への持ち越しとなってしまったが、条件検討は完了しているため、次年度で十分に結果を出せると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の実施予定項目であった「エストロゲン受容体のレポーターアッセイ系を用いたin vitroにおけるSST1の機能評価」を本年度の早いうちに完了し、乳がんのモデル細胞として汎用されるMCF-7を用いた検討に速やかに移行する。MCF-7を用いた検討を行う際には、平成28年度に実施した各検討結果を参考に実験を進める。MCF-7には、SST1が多く発現していることから、siRNA等の手法を用いたノックダウン法を駆使し、細胞増殖試験や、エストロゲン感受性試験を行っていく予定である。
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