2016 Fiscal Year Research-status Report
母乳育児の推進を目指した母乳中セロトニンの生理的役割と意義の解明
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16K18953
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
千葉 健史 岩手医科大学, 薬学部, 助教 (80552926)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 母乳 / セロトニン / β-カゼイン |
Outline of Annual Research Achievements |
授乳期の乳腺では、母乳産生を担う乳腺上皮細胞がセロトニン(5-HT)を合成し、母乳中へ分泌していることが分かっている。また、母乳中に存在する5-HTは、母乳産生制御に関与していることが示唆されているが、その詳細な分子メカニズムは分かっていない。本年度では、母乳タンパク質の一つであり、母乳産生機能の指標とされるβ-カゼインの発現に着目し、5-HTによるβ-カゼイン発現の抑制に関与するシグナルカスケードの解析を行った。 過去の研究において、申請者は、非腫瘍性ヒト乳腺上皮細胞株MCF-12Aを用いて、プロラクチン(PRL)処理がPRL受容体を介したsignal transducer and activator of transcription 5(STAT5)のリン酸化を誘導し、β-カゼインの発現を上昇させることを報告した。また、5-HTによるβ-カゼイン発現の抑制には、乳腺上皮細胞膜上に発現する5-HT7受容体を介したSTAT5のリン酸化の抑制が関与していることを明らかにした。そこで、本解析では、Gsタンパク質共役型受容体である5-HT7受容体の下流に位置するシグナル分子に焦点を当て、どのような分子がSTAT5のリン酸化の抑制に関与しているのかについて種々検討を行った。その結果、5-HTは、5-HT7受容体を介して、cAMPおよびPKAの活性化を引き起こすことが分かった。また、これらの活性化は、脱リン酸化酵素の一つであるProtein- tyrosine phosphatase 1B(PTP1B)の発現誘導を介してSTAT5のリン酸化を阻害し、β-カゼインの抑制に関与していることを明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究計画では、培養細胞を用いて、5-HTによる母乳タンパク質発現の抑制に関与する分子メカニズムを明らかにすることを目標にしており、この目標についてはおおむね達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は計画通り、ヒト母乳中5-HT濃度の定量方法の確立を目標に進めていく予定である。また、母乳試料収集のために必要となる本学医学部倫理審査委員会への承認等の手続きは既に終了している。
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Causes of Carryover |
一部物品の納品時期が遅れたために残額が生じたが、研究計画自体に支障は無く、順調に進んでいる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残額分の物品は、既に納品済みであり、研究計画に基づいて使用していく予定である。
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