2016 Fiscal Year Research-status Report
がん化学療法誘発末梢神経障害治療を目指した分子標的薬の応用
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16K18965
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
椿 正寛 近畿大学, 薬学部, 講師 (30434856)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | オキサリプラチン / パクリタキセル / 末梢神経障害 / 分子標的薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はがん化学療法誘発末梢神経障害機序の解明と分子標的薬による治療応用を目指している。平成28年度はオキサリプラチン及びパクリタキセル誘発末梢神経障害誘導機構について解析を行い、両薬剤により、末梢神経障害が発症することを確認した。これらのモデルを用いて、末梢神経障害発症機構の解明を試みたところ、オキサリプラチン及びパクリタキセル投与後14目におけるマウス腰髄にて数種のシグナル伝達因子が活性化することを認めた。また、知覚過敏や疼痛に関与する受容体の発現変化についても同様のモデルマウスを用いて検討を行い、こちらにおいても数種の受容体の発現増加を見出している。これらについては、今後、活性化あるいは発現増加機構の詳細な解析を進め、末梢神経障害発症における役割について明らかにしていく予定である。 さらに例数は少ないものの活性化が認められたシグナル伝達因子の阻害剤(分子標的薬)を用いてオキサリプラチン及びパクリタキセル誘発末梢神経障害を抑制できるか検討したところ、両薬剤による末梢神経障害を抑制できる可能性が認めている。 以上のことから、活性化が認められたシグナル伝達因子がオキサリプラチン及びパクリタキセル誘発末梢神経障害に関与することが示唆され、これらを抑制する分子標的薬が末梢神経障害治療薬として有用である可能性が考えられる。今度はさらに例数を増やし、分子標的薬における末梢神経障害抑制効果について明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度において、オキサリプラチン及びパクリタキセル誘発末梢神経障害に関わるシグナル伝達因子の同定を試みた。その結果、マウス腰椎においてオキサリプラチン及びパクリタキセルによる冷過敏痛覚過敏症状及び機械的痛覚過敏症状発現時において、数種のシグナル伝達因子の活性化、また、受容体の発現増加を認めている。さらに、シグナル伝達因子の阻害剤(分子標的薬)によりオキサリプラチン及びパクリタキセル誘発末梢神経障害を抑制できる可能性を認めた。 これらのことから、研究計画通り、おおむね順調に進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度はオキサリプラチン及びパクリタキセル誘発末梢神経障害発症機構の解明を引き続き進める。平成28年度において、オキサリプラチン及びパクリタキセル誘発末梢神経障害発症に関与するシグナル伝達因子の活性化及び受容体の発現増加を見出しており、シグナル伝達因子の阻害剤(分子標的薬)にて、障害を抑制できる可能性を認めている。そのため、これらの詳細な作用機構を明らかにする。 平成29年度における研究計画は、活性化あるいは発現増加が認められたシグナル伝達因子及び受容体の詳細な痛みへの関与について解析を進めていく。また、担癌マウスを用いた検討により、オキサリプラチン及びパクリタキセルによる抗腫瘍効果に影響を与えるかについても検討する。 これらにより生化が得られれば、順次、論文投稿や学会発表を行う。
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Causes of Carryover |
平成28年度の研究計画では、必要な実験試薬及び実験動物の購入を行って検討を行った。しかし、計画を遂行する中で他の業務などにより検討が若干、進められなかったことが挙げられる。また、平成28年度での研究費を平成29年度に充て、平成29年度に精力的に研究計画を進めていく予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度では、平成28年度及び平成29年度の研究費をマウス購入費に充てる。オキサリプラチン及びパクリタキセル誘発末梢神経障害発症メカニズムを解明する上で、マウスの購入は必要である。また、オキサリプラチン及びパクリタキセル誘発末梢神経障害発症機序に関与する因子の同定を行うため、抗体などを購入する予定であるため、これらについても執行しなかった研究費を充て、研究課題を遂行する。
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