2016 Fiscal Year Research-status Report
神経膠芽腫細胞におけるテモゾロミドおよびバルプロ酸の浸潤・遊走阻害効果の解明
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16K18968
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
藤田 恵 武庫川女子大学, 薬学部, 助教 (50509966)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | がん / 神経膠芽腫 / 浸潤 / 遊走 / テモゾロミド / バルプロ酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経膠芽腫は非常に予後の悪い脳腫瘍である。特に正常脳組織への浸潤傾向が強く、手術で摘出しきれなかった残存がん細胞の増殖により再発の頻度が極めて高いことは問題である。したがって浸潤を阻害する薬物の発見が早急に望まれる。そこで、本研究では神経膠芽腫患者で繁用される抗がん剤(テモゾロミド)および抗てんかん薬(バルプロ酸)に着目し、これらの薬物が浸潤・遊走を阻害する効果を有するかを解明することを目的とした。平成28年度は、以下の成果を得た。 1.まず、使用する4種類の神経膠芽腫細胞の浸潤・遊走能を明らかにするために、マトリゲルインベージョンチャンバー(R)(BD Bioscience社)を用いて評価した。その結果、A172およびU87MG細胞では浸潤能が高かったが、T98GおよびU118MG細胞では低かった。また、遊走能も同様の結果となった。したがって、同じ神経膠芽腫細胞間でも細胞種により浸潤・遊走能力に差があることが明らかとなった。 2.次に、テモゾロミドおよびバルプロ酸の単独および併用処置が浸潤・遊走に及ぼす影響を検討した。予備検討により細胞の生存や増殖に影響のない処置濃度を決定したのち、1.と同じ方法で評価した。A172およびU87MG細胞では、両薬物の単独または併用処置による浸潤・遊走への影響は認められなかった。しかしながら、T98G細胞では、各薬物単独処置では影響は認められなかったものの、併用処置により浸潤細胞の割合が低下する傾向がみられた。一方、U118MG細胞ではテモゾロミドの単独およびバルプロ酸との併用処置により、浸潤・遊走細胞の割合が無処置群に比べて有意に高くなった。したがって、細胞種により、両薬物が浸潤・遊走を阻害する場合と助長する場合があり、影響が異なることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までのところ、実験手技および結果に関して問題なく進行している。浸潤・遊走能が低い細胞では、2.の結果で差異の検出が困難となることも考えられたが、予定していた検討方法でも十分に結果が得られた。 いずれの検討も日を変えて3または4回以上検討しており、再現性も確認できている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、薬物処置により浸潤阻害作用が示されたT98G細胞、および浸潤・遊走が助長されたU118MG細胞を選択し、作用機序を解明することを目的とする。すなわち、テモゾロミドおよびバルプロ酸が浸潤・遊走関連因子のタンパク質発現に及ぼす影響を検討する。 まず、平成28年度1.と同条件下で細胞に薬物を処置したのち、タンパク質を抽出し、ウェスタンブロット法により発現レベルを確認する。検討するタンパク質は、浸潤・遊走に重要となる接着因子およびその下流因子や基底膜分解因子等を予定している。
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