2016 Fiscal Year Research-status Report
仮想臨床試験による抗がん剤の薬効・副作用の影響因子の網羅的な特定
Project/Area Number |
16K18972
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
年本 広太 国立研究開発法人理化学研究所, イノベーション推進センター, 特別研究員 (70740504)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 薬物動態学 / モデリング&シミュレーション / 遺伝子多型 / 仮想臨床試験 / 個別医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、抗がん剤の薬効および副作用の影響因子を予測できるコンピュータ上での大規模仮想臨床試験法の確立、ならびにそれを用いた副作用因子の推定を目的とした研究を進めている。本年度は、まず抗がん剤のような複雑な体内動態を有する薬物の生理学的薬物速度論(PBPK)モデルのパラメータ推定アルゴリズムとして、クラスターニュートン法を用いることにより臨床試験で得られている薬物血中濃度推移を良好に再現できるパラメータの組み合わせを複数取得することができることを示した。これを用いて、化学療法剤であるイリノテカンの臨床血中濃度推移を再現できるPBPKモデルパラメータの候補を複数取得した。次に薬物濃度推移と薬効・副作用との関連付けに関して、イリノテカンの副作用である好中球減少および下痢関して、PBPKモデルから計算される血漿中および消化管細胞内の暴露量に基づき関連モデルを構築した。それぞれの候補に対して既報の臨床試験と同一の被験者数および各種遺伝的多型頻度を組み込んだ仮想臨床試験を複数回実施した。その結果、任意のパラメータ候補を用いた仮想臨床試験において、既存の臨床報告からも言われているUGT1A1 *28の遺伝的多型により活性代謝物SN-38の血漿中暴露量が有意に上昇する因子として特定することに成功した。また、下痢の指標として既存の臨床報告で挙げられているUGT1A1 *28とBiliary indexを比較したところ、Biliary indexがよりよい指標であることが示唆する結果が得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の年次計画に記述した、複雑な体内動態を有する薬物のPBPK モデルパラメータ推定法の検討・確立、薬物濃度推移と薬効および副作用とを関連付け研究を実施を行い、またイリノテカンを用いて上記の解析に加え実際の仮想臨床試験を実施し既存の臨床報告との比較も実施できたので、予定通りの進捗と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
年次計画に従い、大規模仮想臨床試験による効果および副作用影響因子の特定の実施を行う。この際、仮想臨床試験で得られた薬物濃度推移および暴露量のばらつきの程度が、臨床試験で得られているそれらのばらつきと大きく乖離していないか確認をとりつつ解析を進める。また単一の影響因子のみではなく、因子同士の組み合わせによる薬効・副作用発生の可能性も検討する。確立した解析方法を他の薬剤への適用を実施することにより、仮想臨床試験を用いた副作用因子の特定可能性について検討を進め、本手法の汎用性を実証するとともに仮想臨床試験プログラムが広く利用できるよう基盤づくりに発展させる。
|
Causes of Carryover |
次年度開催される国際学会(6th FIP Pharmaceutical Sciences World Congress 2017, Stockholm, Sweden, 21-24 May 2017)への発表のための旅費を確保するため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
国際学会への旅費として次年度使用額の全額を使用予定である。
|
Research Products
(4 results)