2016 Fiscal Year Research-status Report
ヒトiPS細胞由来肝組織を用いたハイスループットスクリーニング系の構築
Project/Area Number |
16K18975
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木戸 丈友 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (00401034)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | iPS細胞 / 肝臓 / 肝細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、創薬研究や再生医療研究への応用を目的として、ヒトiPS細胞から肝細胞を誘導する試みが活発に行われている。しかし、既報のiPS細胞由来肝細胞は、生体の肝細胞と比較し、機能的に未熟であることが知られている。 肝臓の発生は胎生中期に前腸内胚葉の一部が、心臓や横中隔間充織からFGFシグナル, BMPシグナルを受け、肝前駆細胞となることで開始する。その後、肝前駆細胞は、肝類洞内皮細胞や肝星細胞といった中胚葉由来の細胞からHGF, TGFb, Wntなど種々のシグナルを受け増殖する。増殖した肝前駆細胞は、各種の肝構成細胞との相互作用あるいは細胞外マトリクスからの刺激により肝臓における上皮細胞である肝細胞と胆管上皮細胞へ分化・成熟する。そこで、本研究では、ヒトiPS細胞由来の肝前駆細胞、類洞内皮細胞、星細胞を作製し、これら肝構成細胞を用いた共培養系を樹立することで、機能的な肝細胞誘導を試みた。 ヒトiPS細胞から肝細胞、類洞内皮細胞、星細胞を効率的に作製するため、それぞれの前駆細胞の純化と増幅ステップを取り入れた新たな分化誘導系を樹立した。次に、48ウェルプレートの各ウェル内にコラーゲンIゲルを作製し、iPS細胞由来の肝前駆細胞、類洞内皮細胞、星細胞を10:1:1の割合で播種し、10週間培養し、機能的な肝細胞の誘導を試みた。その結果、肝細胞の代表的な薬物代謝酵素のひとつであるCYP3A4の活性は、経時的に増加した。さらに、遺伝子発現解析の結果、iPS由来肝細胞におけるCYP3A4, CYP1A2, CYP2C19, G6PC, CPS1, TAT, PCK1の発現量は、初代培養肝細胞と同等であった。以上より、各種の肝構成細胞を用いた共培養系の樹立は、高機能性肝組織の構築に有用である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度は、ヒトiPS細胞から各種の肝構成細胞の効率的な誘導法の開発に取り組んだ。また、二次元共培養系に最適な細胞外マトリクスの検討、播種する細胞割合・密度および培地の組成の決定に専念した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、平成28年度に決定した二次元共培養系の培養条件を参考に、低接着性マイクロウェルプレートあるいは細胞接着面をパターン化したマルチウェルプレートに各種のヒトiPS細胞由来肝構成細胞を播種し、三次元共培養を樹立する。さらに、このようなヘテロスフェロイド培養系のほか、重層化培養系についても検討する。生体肝臓では、索状に整列した肝細胞と類洞を構成する類洞内皮細胞の間に、星細胞が局在していることから、培養系においてこのような肝臓特有の構造を再現することで、三次元共培養系を樹立する。 作製した各種のヒトiPS細胞由来肝組織について、肝構成細胞の成熟化・極性形成について解析する。さらに、構築したヒトiPS細胞由来肝組織において、肝臓脈管系の構築について評価する。肝類洞内皮細胞で構成される血管網については、PECAM1の発現を可視化し、その三次元的な広がりと分布について解析する。また、毛細胆管や胆管の形成については、サイトケラチン7の発現を可視化するとともに、FDA(fluorescent diacetate)を培地中に添加し、経時的に代謝産物であるフルオロセインの蓄積を観察し解析する。 さらに、二次元および三次元共培養系を肝疾患モデルへ応用する。
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Research Products
(5 results)