2016 Fiscal Year Research-status Report
網様体コリン作動性介在ニューロンによる運動ニューロン調節機構の形態学的解析
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16K18985
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Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
松井 利康 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 解剖学, 助教 (90531343)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 脳幹網様体 / コリン作動性ニューロン / 鰓弓性運動神経核 / 運動ニューロン / 介在ニューロン / 神経トレーサー |
Outline of Annual Research Achievements |
咀嚼・嚥下にはたらく口腔顔面筋を支配する運動ニューロンには,コリン作動性の神経終末C-terminalがシナプスを形成しており,運動ニューロンの興奮性調節に関与する.これらC-terminalを投射する起始細胞は,延髄の大細胞性網様体に分布するコリン作動性介在ニューロンであることが知られている.本年度は,C-terminal起始細胞と感覚性/運動性ネットワークとの神経連絡を解明する目的で,逆行性トレーサー(Fluoro-Gold)を延髄網様体に注入し,C-terminal起始細胞の存在領域に投射するニューロンの分布を検討した.逆行性標識されたニューロンは,脊髄後角,三叉神経脊髄路核,孤束核,最後野,小細胞性赤核,中脳中心灰白質,結合腕傍核,縫線核など脳幹の様々な神経核で観察された.また脳幹網様体においては,トレーサーを注入した延髄尾側部近くでは小細胞性網様体に標識ニューロンが多く分布したのに対して,延髄吻側部から中脳では外側巨大細胞傍網様核、外背側被蓋核など中間網様体に標識ニューロンが観察された. 加えて,神経トレーシングに利用しているCre/lox誘導性ウイルスベクターの改良を行った.これまで使用していた膜移行シグナル付加GFP(myrGFP)発現アデノウイルスベクターは,ニューロンの樹状突起を精細に可視化できる一方で,軸索の可視化を苦手としていた.この問題点を解決するため,膜移行シグナル付加GFPとともに,シナプス局在分子と融合したGFPも発現するアデノ随伴ウイルスベクターを作製した.このベクターを利用することで,ニューロンの軸索分枝および神経終末部の標識効率について改善が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では,1)網様体コリン作動性介在ニューロンに投射するニューロンの探索,2)コリン作動性ニューロン特異的標識法を用いた介在ニューロンの可視化と形態解析,について実施を計画していた.1)においては,逆行性トレーサーを用いた解析に取り組み,C-terminal起始細胞が存在する延髄網様体に投射するニューロンの分布を脳幹レベルで明らかにできた.2)においては,コリン作動性介在ニューロンの投射様式の再構築が可能となるよう,ウイルスベクターのコンストラクトの改良とベクター作製を終えることができた.当初計画したコリン作動性介在ニューロンの細胞形態の再構築まで進めていないが,解析に必要となるベクターが作製できたことから,研究全体はおおむね順調に進展していると評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は,以下について研究を進める予定である. 1.脳幹網様体のコリン作動性ニューロンに対する神経連絡の解析 これまでの研究により,脳幹網様体におけるC-terminal起始細胞の存在領域は,脳幹に存在する感覚性中継核や自律神経系を含めた運動性中継核と神経連絡を持つ可能性が示された.一方で,前脳に存在する神経核からの投射については不明である.そこで,脳幹で解析を行った標本と同一個体の前脳領域についても組織標本を作製し,逆行性標識されたニューロンの存在する神経核を明らかにする予定である. 2.鰓弓性運動神経核の運動ニューロンで発現するシナプス機能分子の解析 哺乳・嚥下に機能する口腔顔面筋の運動ニューロンは出生直後から活発に活動する必要があり,脳幹の運動ニューロンとシナプスをつくるC-terminalは脊髄と異なる成熟過程をとる可能性が高い.そこで,脊髄のコリン作動性シナプスで発現する機能分子について,口腔顔面筋の運動ニューロンならびにC-terminalでの発現を免疫組織化学により検討する予定である.
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Causes of Carryover |
研究計画の一部についてデータ解析に時間を要したため,当初の見込み額より使用額が少なくなった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
全体の研究計画に変更はないため,次年度以降において必要となる研究用機材および試薬の購入費として,当初計画に従って執行する予定である.
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