2016 Fiscal Year Research-status Report
グリシン受容体欠損によるレム睡眠行動異常症にかかわる神経回路の解明
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16K18987
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
本堂 茉莉 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 研究員 (70639195)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | レム睡眠行動異常症 / グリシン / 睡眠覚醒 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳動物の睡眠は、ノンレム睡眠とレム睡眠に分けられる。レム睡眠時の大脳皮質は覚醒に近い状態で活動しており、夢を見ていることが知られている。このレム睡眠時に、大声で叫んだり、何かを殴るような素振りをしたりと夢の内容に一致した行動が出現するレム睡眠行動異常症(REM sleep behavior disorder, RBD)と呼ばれる睡眠障害がある。興味深いことに、RBDと診断後の10年で7割の患者がパーキンソン病様症状をきたし、レビー小体型認知症患者の9割以上は過去にRBDと診断されている。このように、RBDは神経変性疾患の初期症状であることが近年明らかとなってきた。しかし、RBDの正確な発症部位は疎か、レム睡眠時における筋弛緩(レム脱力)の神経メカニズムも未だに明らかになっていない。これらを明らかにするためには、脳がレム睡眠中にどのように運動出力信号を遮断しているかという基本的な問題を解明することが必要とされる。本研究は申請者が作製したRBD症状を示す条件付きグリシン受容体欠損マウスを基に、責任部位の同定、神経回路の抽出、関連するグリシンニューロンの活動の記録と操作など多角的なアプローチを駆使し、グリシンニューロンとレム睡眠中の筋弛緩との因果関係を解く。 本年度は、申請者が作製したRBD症状を示す条件付きグリシン受容体欠損マウスを基に、アデノ随伴ウイルスによる責任部位の同定を行った。その結果、局所的なグリシン受容体の欠損によるRBDが観察され、RBDの責任部位を同定することができた。また次年度に向けてレム睡眠時筋弛緩作用を担うグリシンニューロンのシナプス接続関係を特定するための予備実験も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の計画通り、アデノ随伴ウイルスによる局所的なグリシン受容体の機能的欠損によるRBDの発現および部位を同定することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度からは、改変型狂犬病ウイルスベクターによる単シナプスかつ経シナプス性の逆行性トレーシングを行う。
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Causes of Carryover |
当初購入することを考えていた励起レーザーでは十分に当該研究の目的を達成できないことが示唆され、見直しを行う必要が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該研究の目的を十分に達成できる機器を購入するため、予備実験を行いより目的に適した機器の購入の検討を行う。
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