2016 Fiscal Year Research-status Report
末梢神経の損傷に伴う中枢神経回路の改編におけるミクログリア活性制御とその機能
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16K18995
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
植田 禎史 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (00511015)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 体性感覚 / 視床 / 脳幹 / 神経損傷 / ミクログリア |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒゲ感覚神経である眼窩下神経を切断することで、末梢神経損傷マウスを作製した。ヒゲ感覚を伝導する経路において、脳幹のPr5核バレレット領域から起こる内側毛帯線維は視床VPm核バレロイド領域のニューロンへ入力する。ヒゲ感覚神経回路が成熟する生後3週以降で、1個のVPm核ニューロンは、その大部分が1本の内側毛帯線維に支配される。しかし、神経損傷マウスでは、神経損傷から5-6日後に視床回路の改編が生じ、一個のVPm核ニューロンは、複数本の内側毛帯線維に入力を受けるようになる。この視床回路改編に先んじて、損傷翌日から損傷経路のPr5核で、バレレット領域特異的に免疫組織化学的手法で可視化されたミクログリアの集積が見られた。このミクログリアの集積は損傷後3日の時点でほぼ最大に近くなり、その後、視床回路改編が引き起こされる損傷後1週間においても持続していた。また、損傷経路のPr5核バレレット領域におけるミクログリアは活性化型の形態を有し、高い貪食活性マーカー発現を示した。一方、回路改編の舞台である視床VPm核では、ミクログリアの顕著な集積が認められなかった。また、ミクログリアの形態や貪食活性マーカー発現においても、損傷経路は対照群と比べて大きな変化は認められなかった。以上の結果から、神経損傷に伴う視床回路改編には、VPm核よりも内側毛帯線維の起始核であるPr5核におけるミクログリア活性が強く関与していることが示唆された。このため、遺伝学的ツールを用いてミクログリアの選択的除去を行い、ミクログリア活性の操作が直接的に視床回路改編へ作用するかを調べる実験を計画した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
神経損傷に伴う視床回路改編を誘導する因子として、ミクログリア活性に着目した。その結果、損傷後の回路改編に先んじて、損傷経路特異的にミクログリア活性が上昇することを見出した。当初の計画にあわせて研究が進捗しており、結果も得られつつある。従って、今後の研究のさらなる発展が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、昨年度に得られた知見を元に、遺伝子改変マウスを用いて神経損傷前後の時期特異的にミクログリアを選択的に除去する手法を用いることで、ミクログリア活性の視床回路改編への直接的な影響を電気生理学的かつ組織学的に評価する。また、平成28年度には神経損傷による疼痛様行動を評価する実験系の立ち上げを試行しており、ミクログリア除去とこの実験系を組み合わせて進めることで、ミクログリア活性の疼痛様行動への影響も評価する。
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Causes of Carryover |
円ドル相場の大幅な変動により、当初購入を予定していた電気生理実験機器の購入が困難となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
使用の増加が見込まれる試薬・抗体等の用途を計画している。
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