2017 Fiscal Year Research-status Report
洞房結節ペースメーカー細胞におけるCa2+時空間動態のリズム形成への寄与
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16K18996
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
姫野 友紀子 立命館大学, 生命科学部, 助教 (10534365)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 自動能 / Caオシレーション / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト心室筋細胞モデル(HuVECモデル, 2015)で開発した最新のCICRモデルを用いて、自動能発生メカニズムについて詳細な検討を行った。筋小胞体(SR)をとりまくCaダイナミクスの性質を分岐解析によって明らかにした。種類の異なる電位依存型L型Caチャネル(Cav.1.2, Cav.1.3)モデルの導入を目指して、速度定数の決定を行っている。 交感神経性刺激が入力された際のシグナル伝達系を導入した洞房結節細胞モデルを発表しているが、そのβアドレナリン受容体シグナルカスケード部分を精緻化した。具体的には、瞬時平衡を仮定した平衡式が多数使用されているカスケード内数式セットを、連立方程式ではなく時間積分と質量保存則を用いた解法で順を追って解を求めていく手法を用いる。結果、βアドレナリン受容体刺激によってAC活性が上昇し、cAMP濃度が上昇し、PKA活性が上昇することで効果器であるL型Caチャネル、SERCA、NaKポンプのリン酸化を進行させるというカスケードモデルの雛形ができた。このモデルを用いると、ノルアドレナリンを単離細胞に作用させた際に見られる、多様なタイムラグを説明できるのではないかと期待される。 昨年度は、洞房結節細胞モデルの構築に加えて、Ca2+動態が洞房結節に類似するものとして、iPS細胞モデルの構築をおこなった。今年度はCa時計による自動能をもつ細胞の典型例として肺静脈心筋細胞のモデル化をおこなった。自動能発生メカニズムの比較を行いながら、各イオンチャネルのコンダクタンスやβあるいはαアドレナリン受容体刺激の効果の自動能への貢献度合いを評価し、理解を深めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
洞房結節細胞において、細胞内Ca2+濃度が高い状態や、交感神経優位な状態にあるときに、Ca2+による自動能が発生しやすいという所見がある。したがって、βアドレナリン受容体シグナルカスケードモデルの精緻化は、生体内においてノルアドレナリンやアドレナリンによってβ1アドレナリン受容体が刺激された際に引き起こされるCa2+過負荷状態をシミュレーションするのに不可欠なプロセスであった。 iPS細胞モデルは、もとにする実験データのばらつきが大きく、実験的には得られた活動電位波形から洞房結節タイプ、心房筋タイプ、心室筋タイプ、と分類されたりもしていたが、シミュレーション的には一つのiPSモデルとして提示するのは困難であるという結論が得られた。そこで、iPSモデルを一つに固定するのではなく、得られた波形から実験で用いられたiPS細胞のチャネルの発現状態を予測するプログラムを作成する方向で進んでいる。 肺静脈心筋細胞は、ノルアドレナリンによる刺激でCa2+依存性に自動能が発生する心筋細胞で、洞房結節細胞で一部の研究者らによって唱えられているCa2+時計による自動能をもつ細胞としての典型例であると言えるだろう。我々がHuVECモデルで構築したCICRモデルは、局所Ca2+濃度と細胞内Ca2+動態を精度良く再現できるモデルとして肺静脈心筋細胞における自動能メカニズムを理解するのに有用である。 Ca2+動態が似ていると想定したiPS細胞モデルと、Ca2+動態が異なる典型例としての肺静脈心筋細胞モデルとの比較をもとに、細胞内Ca2+動態に関して予定していた以上の深い理解が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間を延長して、今年度が最終年度となる。Cav.1.2, 1.3モデルを新しく構築したモデルで置き換え、洞房結節細胞モデルを完成させる。完成したモデルを用いて解析を行い、Ca2+動態が自動能に及ぼす影響の大きさを評価する。また、βアドレナリン受容体シグナルカスケードモデルも導入し、自動能あるいはCa2+動態への影響を評価する。評価の段階で、iPS細胞や肺静脈心筋細胞との自動能発生メカニズムとの比較を行う。
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Causes of Carryover |
期間中に産休を取得し、前後の出張の予定を調整したために支出が予定よりも少なかった。一方で研究協力者のサポートが非常に重要であり、最終年度にも継続して謝金の支出を行う予定である。また、研究協力者と代表者が研究を行うための研究施設の賃料も支出する。延期していた物品の購入も次年度行う。
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Research Products
(9 results)