2016 Fiscal Year Research-status Report
老化がもたらす骨格筋特異的miRNAの血中分泌量減少の生理的意義の解明
Project/Area Number |
16K19003
|
Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
福岡 聖之 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 神経薬理研究部, 研究員 (60712669)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | マイクロRNA / 筋分化 / 血中セル・フリー核酸 / 老化 / 細胞外分泌小胞 / 骨格筋 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「老化による特定組織の機能低下を感知する組織特異的発現型マイクロRNA (miRNA)を見出すこと」と「老化により血中量の減少が見られる骨格筋特異的発現型miRNA をテストケースとして、その血中量が減少することの原因とそれにより生じる筋分化過程への影響、そして老化マウスで見られる筋再生遅延へのmiRNA 補充効果を明らかにすること」を目的としている。目的達成のため本年度は、老化によって変動する血中miRNAの探索を行った。十分なクオリティを有する血中RNAを取得するため、採血方法および血漿RNA抽出方法の検討を行った後、若齢(6-7週齢)および老齢(2年齢)のC57BL/6Jマウスに由来する血漿RNAを用いたマイクロアレイ解析を実施した。予備実験において、骨格筋で特異的に発現し筋分化への関与が知られるmiR-1が老齢マウスで減少することを見出していたが、今回の結果から、骨格筋で発現し筋分化に関わるmiR-1以外のmiRNA(e.g., miR-133a, miR-26a)についても老齢マウス血漿中で減少することが分かった。老齢マウスで減少したmiRNAについて、血漿中の細胞外分泌小胞(EVs)におけるmiRNAの発現も調べた。血漿からEVsを回収する方法を検討した後、若齢・老齢マウスの血漿EVs RNAを用いてmiRNAの発現を調べた。その結果、ほとんどのmiRNAについて、血漿と同様に、老齢マウスで減少することがわかった。加えて、本解析で得られた血漿およびEVsにおけるmiRNA発現データについて、qPCRによる確認実験も実施したところ、マイクロアレイ解析のデータとほぼ同等の結果が得られた。上記の結果から、老齢マウスの血漿およびEVsにおいて、骨格筋で発現し筋分化に関わる複数のmiRNAが減少していることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、計画していた若齢および老齢マウスの血漿RNAを用いた網羅的発現解析を予定通り実施することができた。本解析結果から、老齢マウスの血漿およびEVsにおいて、骨格筋に関わる複数のmiRNAが減少することを見出すことができた。現在、次年度に予定している若齢および老齢マウス血清の筋分化への影響について、解析の準備を進めている段階である。また、次年度以降に予定している老齢マウスを対象とした解析に向けて、必要数のマウスの飼育も計画通り行っている。 上記進行状況により、初年度における研究計画は概ね順調に実施できたと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も研究計画通りに、若齢および老齢マウスから回収した血清の筋分化に与える影響について、筋芽細胞株を用いたin vitroアッセイによって明らかにすることを目指す。また、老齢マウスの飼育の継続と老齢マウスを用いた筋損傷実験の検討を行い、次年度以降の老齢マウスへのmiRNA補充効果の解析、老化マウス血中の骨格筋特異的miRNA量が減少する原因の探索の準備を進めていく。加えて、老齢マウス血漿中で減少するmiRNAの筋分化への影響についても調べたいと考えており、筋芽細胞株へのmiRNA導入実験も新たに予定している。
|
Causes of Carryover |
本年度の研究計画は前述のように概ね順調にすすんでおり、また研究予算も計画的に使用することができた。しかしながら、年度末になって、早急に必要な試薬や備品が生じなかったため、本年度中の残額の使用を見送ることにした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、本年度に見出した老齢マウス血中で減少するmiRNAの導入実験を新たに計画しているため、本年度の残額は、そのmiRNA導入実験に必要な試薬の購入に使用したいと考えている。
|
Research Products
(10 results)