2016 Fiscal Year Research-status Report
グレリンが環境変化適応性覚醒反応を起こす脳内メカニズムの解明
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16K19004
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
金 主賢 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 講師 (00635146)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 睡眠・覚醒 / グレリン |
Outline of Annual Research Achievements |
脳-腸ペプチドであるグレリンの中枢投与は覚醒作用を示し、一方その受容体欠損は環境変化適応性覚醒反応を選択的に消失させる。環境変化に対する適応反応や注意、認知反応には適切な覚醒レベルの維持が必須であり、上記の先行報告は覚醒反応におけるグレリンシグナリングの重要性を示唆する。そこで本研究では環境変化適応性覚醒反応の脳内調節機構におけるグレリンの役割を解明することを目的として、覚醒中枢のニューロンに対するグレリンの作用機序についてラット脳スライスを対象としたパッチクランプ法で検証を行った。覚醒中枢の一部である結節乳頭核ニューロンに対して、グレリンは後シナプス性の脱分極作用を示した。そのイオン機序を解明するために、グレリンにより誘発される内向き電流の逆転電位を検証したところ、カリウムイオンの平衡電位とほぼ一致した。また、同脱分極反応がナトリウム/カルシウム交換体の阻害剤であるKB-R7943または細胞内カルシウムキレータであるBAPTAの存在によって消失する事が認められた。すなわちカリウムイオンチャネルの閉口により脱分極反応が生じるが、その細胞内伝達経路にはナトリウム/カルシウム交換体による細胞内カルシウム濃度変化が関与していることが示唆された。電気生理計測が行われたニューロンの組織学的特性を免疫染色によって検証したところ、グレリンによって脱分極が起こるニューロンの半数以上がヒスタミンニューロンであったことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、グレリンの覚醒中枢ニューロンに対する作用を検討した。グレリンが覚醒中枢の一つとして知られる結節乳頭核のヒスタミンニューロンに対してグレリンが興奮性の作用を示すこと、およびそのイオン機序が判明した。中枢性グレリンによる環境変化適応性覚醒反応のメカニズム解明が、睡眠障害の診断や治療法開発の基盤的根拠となる睡眠・覚醒制御機構の包括的な理解へつながる。したがって、進捗状況としては、おおむね順調に進展、と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、グレリンが覚醒中枢のニューロンに対して興奮性の作用を示すことがin vitro実験による知見から明らかとなってきたが、次年度はグレリンまたはグレリン受容体拮抗薬の脳局所投与および睡眠・覚醒状態判別を用いたin vivo実験による検証を行い、グレリンが覚醒中枢ニューロンに及ぼす作用が動物の睡眠・覚醒行動にどのような影響を与えるのかを検証することで、グレリンの生理的役割を解明していく。
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