2016 Fiscal Year Research-status Report
細胞内局在性ムスカリン受容体の海馬神経新生における役割の解明
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16K19012
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
宇和田 淳介 旭川医科大学, 医学部, 助教 (70580314)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ムスカリン受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
海馬歯状回の未分化な神経系細胞におけるムスカリン性アセチルコリン受容体M1サブタイプについて調べるため、マウスから摘出した海馬歯状回組織から神経幹細胞、神経前駆細胞を単離・培養する系を確立した。得られた未分化状態の細胞を免疫染色により解析したところ、実際にこの細胞においてムスカリンM1受容体を発現していることが確認され、更にその局在は細胞内、特にゴルジ体近傍に集積していることが示された。同様の局在性は海馬ニューロンにおけるムスカリンM1受容体でも確認されることから、神経幹細胞、神経前駆細胞における細胞内M1受容体についても、海馬ニューロンの細胞内M1受容体と同様の機能性の存在が示唆される。現在、この初代培養系を使用して、その機能性の解析を進めるとともに、組織レベルでの細胞内M1受容体の検出・定量を試みている。 また、細胞内のM1受容体を活性化するためには、アゴニストのアセチルコリンが細胞内に取り込まれる必要がある。脳の各部位を使用した放射性標識アセチルコリンの取り込み実験によって、アセチルコリンが実際に細胞内へ取り込まれることを示した。そこで実際に働いているトランスポーターを同定するツールとして神経幹細胞の初代培養系を利用することを予定している。 神経幹細胞における増殖、分化を制御する上でMAPキナーゼ系の活性は重要である。本研究と平行して行った上皮細胞系を使用した実験において、ムスカリン受容体がp38 MAPKを介したTACEプロテアーゼの活性化によるERK1/2のトランスアクチベーションを惹起するという新たなMAPキナーゼシグナリング系の存在を明らかにした。この経路は炎症性シグナリングの制御にも関わっている。現在この新しい経路が海馬歯状回における神経新生に対して機能するか否かについても解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度において、実際に海馬歯状回の神経幹細胞、神経前駆細胞においてムスカリンM1受容体の細胞内、特にゴルジ体近傍への局在を確認することができた。これにより、細胞内M1受容体の機能性を解析するという、本研究の意義が補強されたといえる。また、解析に際し確立した神経幹細胞、神経前駆細胞の単離培養技術は、シグナリング経路の解析、細胞増殖への効果、細胞分化への影響など、細胞内M1受容体の機能性解析における有効なツールであり、この技術の確立は以降の解析を進めるにあたり重要な意義をもつ。アセチルコリン輸送を制御するトランスポーターの同定に向けたツールとしても有用である。また、並行して行った実験により、上皮細胞系におけるムスカリン受容体の新たなMAPキナーゼ系制御機構を明らかにした。MAPキナーゼ系は神経幹細胞の分化・増殖制御に重要であり、同様の系の神経幹細胞での存在を確認することが新たな課題として浮上した。 神経幹細胞、神経前駆細胞の初代培養系によるin vitroの実験が進む一方で、in vivoにおける細胞内M1受容体を解析する実験については遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
神経幹細胞、神経前駆細胞の初代培養系を用い、細胞内M1受容体の惹起するシグナリング経路の解析、また、細胞増殖、ニューロン、グリア細胞への分化に対する影響についての解析を進める。また、in vivoにおける細胞内M1受容体の発現を確認するとともに、in vivoでの機能性を明らかにするために、浸透圧ポンプを用いた持続的薬物投与による影響の解析について、安定的なデータを得るための基礎実験を平行して進める。
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Causes of Carryover |
海馬歯状回の神経幹細胞、神経前駆細胞のin vivoの解析が予定より遅れた分、実験系にかかる費用の支出が翌年以降に先送りされた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年に繰り越された予算については、神経幹細胞、神経前駆細胞の培養にかかる培地等、実験動物費用、また、マウスへの薬物持続投与の為の浸透圧ポンプなどの購入に当てられる予定である。
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Research Products
(7 results)